〜第1回目〜
「残酷グリム童話って何?」
童話「シンデレラ」に登場するガラスの靴っていうのは、原典では草の靴だったそうな。
しつは「grass(草)の靴」だったのを
「glass(ガラス)の靴」と翻訳してしまった、と。
ウソかホントかは知らンけど、そんなエピソードを雑学本で読んだことがあります
(いつぞやベストセラーになった「本当は残酷なグリム童話」っていう本には
そのまんま「ガラスの靴」って書かれてましたが)。
ま、ワタシと「残酷グリム」との出会いっていうのはこんな感じだったんですよ。
偶然の出会いのほうが、運命っぽくて素敵ですね。
そんなことはどうでもいいとして
もともとの「グリム童話」っていうのは、御存知のとおり
おなじみ「シンデレラ」や「7匹の子ヤギ」など、子供向けのお話ですよね?
ところがどっこい、このグリム童話ってのが
本当は大人もビックリするくらい、エロくてバイオレンスな内容だったそうな。
はじめて「グリム童話」が世に出たときの姿ってのは、
とにかくもうお子ちゃまには見せられないっていうくらいヤバイ内容だった、とのコトなのです。
われわれにとってお馴染みの「グリム童話」は、
そんなSM[注1]なシーンを健全なものに書き換え書き換え書き換えまくり、
けっきょく6回も書き換えられたあげく辿り着いた「第7版」というバージョンなのだそうです。
というコトで、我々の中で「グリム童話」がどのような形で認識されているかを知るべく、
こんなアンケートを取ってみました。
「初版グリム童話が書かれたのはいつ頃か?」
「どこで書かれたか?」
「第7版に至ったのは、初版が書かれてから何年後くらいか?」
「第7版はどこで生まれたか?」
返ってきた答えはこんな感じ。
「初版グリム発行→1500〜1700年頃。ヨーロッパ周辺で。」
(「紀元前、古代ギリシアで書かれた」って答えた人もいましたけど、それは「イソップ物語[注2]」です。
ナイスボケですな、アキオくん(仮名)よ)。
「第7版はいつ、どこで生まれたか?」という質問に対してはほぼ全員のひとが
「初版出版から200年後。日本で。」という回答をしてくれました。
(たとえば「江戸時代にオランダから」「明治維新後」「戦後」に輸入され、
あたりさわりのないように書きかえられた、って具合)。
みんなの「グリム童話」に対するだいたいのイメージは共通してたんですね。
シンクロニシティです。
かくいうワタシも「200年後、明治維新のとき輸入された」と思ってたンですわ。
ゼミのセンセは
「ドイツは真実の国[注3]で事実を優先するのに対して、
日本はタテマエの国なので、汚いものを覆い隠す傾向が強い。
たとえばガンの告知にしても、日本では患者にはウソの報告をする。
第7版のグリム童話が子供向けのお話なのは、日本の国民性の影響だ。」
なーんてカッコイイことを言ってたっけ。
で、事実はどうかと言いますと、
「グリム童話」の初版が出たのは
「19世紀初頭(1812年)のドイツ」で。
そして第7版が出版されたのは
「25年後(1857年)、同じくドイツで」です。
我々のイメージよりも「グリム童話」は歴史が浅くて、
しかも現在浸透している「第7版」が誕生するまでは、じつは想像以上に短期間だったのですね。
さらに驚くべき事実は、改訂が重ねられたのは日本じゃなくって、なんとドイツ。
トドメに、この改訂作業を繰り返し行ったのは
作者のグリム兄弟自身だったのでした。
ビックリです。
日本の国民性なんて関係なかったンですね、実際は。
でも「残酷グリム」系の本には、
「初版から第7版に至るまでの期間は、たったの25年だった」とか
「グリム兄弟自身によって改訂された」なーんて全然書かれていません。
これって「第7版は日本で書かれたという思い込み」を前提に、
「本当はこんなにエロいんだよぉ〜、グヘヘ[注4]。」って言ってるようなもンですよ。
つまり、読者に「第7版はニセモノで初版がホンモノ」っていうような、
「初版こそ正しい」っていうイメージを与えるための巧妙なカラクリが仕掛けられてたのですね。
んでもって、「初版こそ正しい」というイメージを植え付けたうえで、
「グリム童話が書きかえられる必要があったのか?」という疑問については、
「エロくてバイオレンスな描写があったから」って言ってるワケですよね、
「残酷グリム系」の本では。
さあ、書きかえられる理由が本当にそうだったのか?ということを
次回から検証していきますね。
今回のポイント |
われわれの知る「グリム童話第7版」は、 なんとグリム兄弟によって改訂されたものだった。 |
[注1]SM:
Sはサド、Mはマゾの略。語源は、前者が歴史上の人物で後者は小説の登場人物の名前。
詳しい意味は・・・お父さんに聞いてください。
あと卵のサイズで「MSサイズ」というのがありますが、たまに「SMサイズ」と言う人がいます。
恥ずかしいので注意しましょう。
[注2]イソップ物語:
古代ギリシアのイソップという人が牢獄の中で、ヒマ潰しのために書いた物語。
やたらと説教くさい内容が多く、「本当にヒマだったンだなぁ。」と心の底から思わせてくれます。
[注3]真実の国:
ドイツという国が本当に真実の国がどうかは知りません。
日中からガバガバとビールを飲みまくってるというイメージがあります。
そのくせに、やっぱり飲酒運転は違法になるそうな。
そのへんはしっかりと真実の国みたいです。
[注4]グヘヘ:
なんだかいかにも下心がありそうな笑いかたのこと。
こんな笑いかたをする人は見たことないが、
実際にされるとかなりイヤな気分になるのは間違いないでしょう。