さらば ニンテンドウパワー
ニンテンドウパワー。
それは、全国数多のゲーマーたちの青春とも言えるスーパーファミコンのソフト群を、
「書き換え」という形で24時間いつでも安価で提供するという、素晴らしく画期的なサービス。
ニンテンドウパワーは、スーファミ愛好家にとって、
いわば青春の栄光を表すモニュメントのような存在。
まぁ、モニュメントつっても、正確にはローソンのMMS(マルチメディアステーション)
「ロッピー」のことを指すのだが気にするな。
2002年8月31日、ローソンでのソフト書き換えサービスが終了致しました。
サービス開始の97年11月(全国で開始されたのは翌年2月)から約5年。
お疲れ様でしたの意味を込めて、
ニンテンドウパワー(以下NP)がどんな人生を送ったのかを振り返ってみることにしましょう。
きみの名は ニンテンドーパワー NPのサービスが開始された97年とは、ゲーム業界にとってはどういう年だったのでしょうか? 最初はそのへんの時代背景から見ていきましょう。 97年といえば、まずプレステで「ファイナルファンタジー7」を発売されました。 そのあまりのビジュアルにド肝を抜かれた方も多いことかと。 そしてスーファミ後継機のロクヨンで「ドラゴンクエスト7」が出るという噂を覆し、 プレステで発売するとの発表もありましたね。 そのあまりの当然のできごとに頷いた方も多いことかと。 ともあれ97年は、プレステが今の地位をほぼ確立した年であり、 任天堂は「ポケモン人気だけで食い繋いでいる」などと批判されだした年なのでありました。 もともと任天堂は花札のメーカーということで、 「天に任せる」という社名はダテじゃなく、 当時の任天堂は、まさしく「天=ポケモン」と言われても反論できなかった状況だったと思います。 なにせ、この時期の任天堂は、 ゲームのロイヤリティよりもポケモン関連商品のロイヤリティのほうが大きかったという噂ですから。 そんな年に任天堂とローソンは、 どういった思惑でゲーム書き換えサービスを開始したのでしょうか? NPのプロジェクトが動き始めたのは、 サービス開始をさかのぼること約2年、95年の年末頃のできごとでございます。 その頃の世間は、毎回恒例だった「ドラクエ6」発売のニュース(※1)が霞むくらい、 ウィンドウズ95フィーバーで盛り上がっておりました。 ローソンは「これからのコンビニは、いろんな商品を取り扱わねばならん!」と考えてたらしく、 多目的サービス端末として「ロッピー」を立ち上げることにしました。 ここでの「いろんな商品」とは、 様々な情報サービスをはじめ、コンサートのチケットとか、新作ビデオなどの娯楽品でして、 その娯楽品の中には、当然ゲームソフトも含まれていました。 そして、ゲームソフト提供の提携先として、任天堂を候補に挙げたそうです。 いっぽうその頃、任天堂のほうは、 翌年6月に新機種「ニンテンドー64」の発売を控え、 スーファミとの住み分けをどうしようかといろいろ考えておりました。 その住み分け方法とは次のとおりです。 すでに晩期に突入していた当時のスーファミは、ソフト価格を大幅に下げていたため(※2)、 実勢価格が下がると低年齢層への売れ行きが増えるというデータを持っていました。 そこから、新しいハード(ロクヨン)を主力に、 スーファミをゲームの入門機として扱い、旧作ソフト群を安価で提供していこうと考えたのです。 任天堂らしい(※3)です。 そんなローソンの新サービス展開と、こんな任天堂の旧ソフトの提供。 相反する2つが融合し、 ローソンのMMS「ロッピー」の1コンテンツとして、 ソフト書き換えサービス「ニンテンドウパワー」は誕生したのであります (ちなみに当初は、「ゲームキオスク」という名称でした)。 ※1 ニュース: 「ドラクエ3」が発売されたとき、深夜からの行列ができたとか、 予約待ちだったとか、ソフト抱き合わせで買わされたとか、 ヤミ売買が行われたとか、盗難被害が出たとか、とにかくいろんなことが起こり、 以降、シリーズ発売日には必ずニュースで報道されるのが慣習になった。 発売日に買えなかった人は、ニュースを見ながら自分を慰めるのも慣習であった。 ※2 ソフト価格を大幅に下げていた: スーファミのソフトは、任天堂へのライセンス料が高かったことや、 ソフトに使用するROM価格の高騰によって、ソフト1本が1万2000円もした時期がありましたが、 プレステやサターンがゲーム機の主力になりはじめた晩期には、 ライセンス料の引き下げをして7000円くらいまで値下げした。 ※3 任天堂らしい: なぜか任天堂は、過去のソフト群を大事にします。 それを裏付けるように、初代ファミコン・スーパーファミコンの本体は、 廉価版といえる「ニューファミコン」「スーパーファミコンジュニア」を発売していますし、 現在でも利益をほとんど無視して、細々と生産され続けているというのですから驚きです。 過去のソフトを生かすという面では、ゲームボーイアドバンスが初代ゲームボーイに下位互換していることがありますが、 じつはスーファミも88年の開発段階では、初代ファミコンのエミュレーターを搭載し、下位互換させるというプランが存在しました。 過去の遺産を生かすという考えは、もう10数年前からあったのである。 |
こんにちは ニンテンドウパワー スーファミソフトの書き換えサービスと聞いて、 オールドゲーマーたちは、往年の「ディスクライター」を思い出したことでしょう。 ディスクライターとは、ご存知、ファミコンのディスクを500円で書き換えするものございまして、 昔のおもちゃ屋の隅には必ず置いてあったアレのことでございます。 もっとも、ディスクライターとNPの書き換えシステムの違いはいくらかあります。 そんなディスクライターと、NPの最大の違いは何かと言いますと、 「複数のソフトを1本のカセットに書き込める」(※4)という点であり、 それに裏打ちされた「容量の大きさ」だとも言えるでしょう。 スーファミ書き換え用のカセットは、32メガ(※5)という大容量を誇っていました。 CDやらDVDがブイブイ言わせる昨今からしてみれば、 32メガつっても、ハナクソほどの容量でしかありませんが、 その容量は、なんとあの「ドラクエ6」と同じ(※6)でございますよ。 さらに凄かったのは、そんな大容量カセットを3980円という安価で提供したことでございます。 「中身の入ってないソフトが4000円近くもするなんて、安いわけがないだろう」と思ったアナタ、 シャウト! もとい、シャラップ! 書き換え用カセットが3980円という価格は、 まぎれもく当時の最先端が生み出した価格であり、 それがあったからこそNPという夢のシステムは実現したのであります。 いわば、最先端技術の結晶である書き換えソフトの存在こそが、 NPにかける情熱の根源だったのです(いいすぎ)。 とにかくNPの書き換えソフトはスゴイんだ! あの白いボディがガンダムみたいでカッコイイぞ! 登録されてるカセットを識別するためのシールが貼れる(※7)けど、 たぶん誰も使わなかったと思われるのもスゴイぞ! FXチップも使えない(※8)けども、そんな揚げ足とりなンかどうでもいい! とにかくスゴイんだ、ウォー!! 任天堂のォォ、技術はァァ、世界いちィィィッ!!というドイツ軍人の声が聞こえてきそうです。 NPの書き換えソフトがいかに凄かったか? 僕たちがそれを知るカギは、スーファミの歴史にあり、 その歴史とは「スーファミ二大汚点」(※9)と誉れ高い「サテラビュー」にあるのでございます。 ※4 複数のソフトを1本のカセットに書き込める: ニンテンドウパワーの書き換えソフトの容量は、さっきも書いたけど32メガ。 それを8つのブロックに分割し(1ブロック=4メガ相当)、複数のデータを書き込んで行く形式だった。 しかし、ファミコンのディスクシステムも、 片面分の容量しかないゲームは、1枚に2つのゲームを入れることが可能だった (ディスク容量は1メガ。つまり片面は512メガだった)。 が、それはすべてカートリッジで発売されてたソフトだった。 ※5 32メガ: パソコンに触ってる人ならご存知、容量を表す単位。 パソコンにおける「メガ」とは1000バイトを指しますけども、 カートリッジのデータ量に関しては、1バイト(bite)の1/8を表す1ビット(bit)で構成されているらしい。 僕はそのことを知らず、当時コンピューター専門学校に通っていたオタッキー仲間Mクンに 思いっきりバカにされたことがあるので、 詳しいことは、コンピューター関係の人に聞いてみよう! ※6 「ドラクエ6」と同じ: もっとも容量の数値は、「データの圧縮」の観点から見れば全然アテになりません。 スーファミソフトで最もデータ圧縮率が高いと思われるのは、「ストリートファイターZERO2」。 あまりにもゲーム容量が多いため、ロード時間を必要としないスーファミですらロードするタイムラグがある。 が、「ストリートファイターZERO2」は、先にプレステ版やサターン版が発売されていたので、 わざわざスーファミ版をプレーした人は少ない。 ※7 シールが貼れる: 書き換え用ソフトは、最大7タイトルのゲームを入れることが可能です (複数のタイトルを入れた場合、ゲーム選択のメニュー画面に1ブロック消費する)。 それをソフト外見から識別するようにするために、 ゲームタイトルを記したシール(1.3mm×1.9mm)を貼るスペースがあるのですが、 そのシールをどこで手に入れるのか僕は知らない・・・。 「ファミ通」のNPコーナーから切り取って、糊で貼れとでもいうのか? ※8 FXチップ: 正確には「スーパーFXチップ」。 カートリッジ型のソフトのメリットとして、ロード時間が限りなくゼロに近いという特徴のほかに、 特殊なチップを搭載し、本体のスペックを引き上げることができるというのがあります。 カートリッジにチップを積むことは、初代ファミコンでは90年以降よく行われたことであり、 特にコナミの音源チップは有名で、ファミコンを超えたサウンドを奏でることで、多くのユーザーに感動を与えました。 さてスーパーFXチップとは、要するに演算処理チップのことでして、 スーファミのCPU性能をパワーアップさせるために開発されました。 これによってスーファミでもポリゴン表示が実現したが、 後にFXチップの性能を非ポリゴンゲームに生かしたところが、なんとも任天堂らしいです。 ちなみにFXチップ搭載のゲームは、「スターフォックス」、「ワイルドトラックス」、「ヴォルテックス」(他社製品)、 「ヨッシーアイランド」「マーヴェラス」の5本(だと思う)。 なお、書き換え用カセットにはFXチップは搭載していないので、当然上記の5本は入っていない。 ※9 スーファミ二大汚点: もうひとつの汚点は「スーファミCD」。 92年頃、ROM価格の高騰とゲーム容量の拡大を背景に、 安価で大容量なソフト媒体として、スーファミもCD−ROMでソフトを供給するという、 過去に聞いたことがあるようなプランがございました。 なんとソニーとフィリップスが開発に協力していたが、大人の事情により開発中止となりました。 詳しいスペックは忘れましたが、当時の情報誌によると 「画面半分の大きさのキャラを約40分の間、秒間24コマのアニメーションで動かせる」でした。 凄いのか凄くないのか、よくわからんところがなんかスゴイ。 |
すごいよ ニンテンドウパワー サテラビュー。 それは、衛生放送のデータ放送(BS回線)を利用した、 とってもハイテクなソフト配信サービス(※10)でありました。 そのデータを保存するために、専用のメモリカセット(※11)があったのですが、 じつはこのメモリソフトと、NP書き換え用ソフトが、 「フラッシュROM」と呼ばれる記憶媒体だったのです。、 通常、ROMにデータを保存することは、 「焼く」とも言われているように、1度データを書き込むと再び書き換えることができません。 いわばCD−Rのようなものです。 ですが、ファミコンやスーファミではお馴染み、バッテリーバックアップ(※12)機能があるので、 データの書き換えは当たり前のことだと認識していることだと思います。 しかし、フラッシュメモリとバックアップメモリは、記憶の仕組みが異なります。 フラッシュメモリとバックアップメモリの違い。 それは、記憶データに寿命があるかどうか、です。 バックアップメモリは、「バッテリーバックアップ」という名称で呼ばれることからわかるように、 バッテリー、つまり電池によってデータを保存しているのです。 たとえば初期のファミコンソフトには、 「電源を入れている限りは」ゲームハイスコアが記憶されているというパターンが多かったと思います。 それを「電源を切っても」データが記憶されるようにするために、 電池をカセット内に内蔵(※13)した記憶装置が「バックアップメモリ」なのです。 いっぽうフラッシュメモリのほうは、 データを記録するにあたってリチウム電池などのバッテリーを必要とせず、 半永久的にデータを保存することが可能なのです。 では、なぜNPはバッテリーバックアップではなく、 フラッシュメモリでなけりゃいけなかったのか? それは、バックアップメモリはすぐに消えてしまうから、です。 カセットの接触不良で消えるわ、コンセントが抜けただけで消えるわ、停電になっただけで消えるわ、 リセットボタンを押しながら電源を切らないと消えるわ、 あ、これは昔の話か。 とにかくせっかくお金を払って書き換えしたのに、そんなにポンポンとデータが吹っ飛ぶのなら大問題です。 暴動起きます。 そんなこんなでNPのデータの記憶媒体は、 半永久的に記憶できるフラッシュメモリでなければいけなかったのです。 ところがどっこい、フラッシュROMはコストがかかるという欠点がございました。 普通のROMと比べると、そりゃあもう異常なまでに高価だったそうです。 事実、同じフラッシュROMだったサテラビューのメモリカセットは、 8メガと容量が大きくない割に、なんと8000円近くもしました(96年の時点)。 しかし。 しかしだ! NPのフラッシュメモリは、容量が4倍の32メガで、お値段はなんと3980円。 32メガで3980円でご奉仕させていただいております! 安いです。 これはお買い得、ジョニーもマイケルもダイアンもメアリーも大喜び! まぁ、約2年の間にフラッシュROMの価格が安定した、というのが本当のところなんでしょうけども、 とにかく僕は、NPの書き換えソフトの価格に任天堂の痛みを感じた! そして、痛みに耐えてよく頑張った! 感動した! ※10 サテラビュー: 衛生放送のチャンネルのひとつセントギガと提携した画期的サービス。 BS回線を使って、ゲームデータをダウンロードしたり、 番組内でゲーム攻略のヒントを出したりなどする仕組みだったが、 周辺機器が高価だったことや、衛生放送を見れる環境にいるユーザーには少なかったため、 けっこう短期間でサービス終了に至った。 (サテラビューでのみ配信された、スクウェアの「ラジカルドリーマー」は、スーファミソフトで最もプレミアがついている)。 現在はサービスを終了しているため何の役にも立たないが、 スーファミ本体底部にあるスロットの唯一の使い道なので、欲しがる好事家は多い。 ※11 (サテラビュー)専用のメモリカセット: 今でいうメモリーカードのようなもの。 大きさは、ゲームボーイのソフトと同じくらい。 つーか、サテラビュー用のソフトの形自体がスーパーゲームボーイに酷似しているので、 本当にスーパーゲームボーイのように見えるのがミソ。 対応ソフトは、たぶん全部で6本。 「RPGツクール2」「サウンドノベルツクール」「音楽ツクール」などのソフトに対応していたため、 そのデータ記録用として購入した人が多い。 ※12 バッテリーバックアップ: セーブデータを保存することができるため、 それまで主流だったパスワードコンティニューの呪縛から解き放たれた。 と同時に、セーブデータの消失という恐怖の呪縛に囚われることとなる。 「ドラクエ3」の「ぼうけんのしょがきえてしまいました」のメッセージがトラウマになったユーザーは数知れず。 ※13 カセット内に内蔵: 内蔵されている電池は、リチウム電池。 寿命は約2〜5年と言われており、電池のバッテリーが切れたら当然データセーブができなくなる。 バッテリーが切れた場合、メーカーによっては無償で交換してくれるが、 その際データは失われて戻ってくるので、喜んでいいのかどうかは微妙。 |
ロケットスタートだよ ニンテンドーパワー ローソンと任天堂のコラボレーションとも言えるNP。 そのスタートは、かーなり順調だったそうな。 その順調なスタートの背景には、 恐るべき準備が用意されていたと言っても過言ではないと思います。 なにより絶賛すべきなのは、NP立ち上がりの段階で 参入していたライセンシー(NPに提供するソフトの開発元・販売元)の数がハンパじゃなく多かったことです。 その面々を見てみますと、 任天堂を筆頭に、 カプコン、コナミ、ナムコ、アスキー、アトラス、ハドソン、タイトー、ヒューマン、チュンソフト、バンプレストなど、 スーファミ全盛期を支えたソフトハウスばっかで、まるで「ヒーロー大集合」のような感すら漂っています (アスキーのソフトは、企業再編成する際になくなりました。「バイオマン」のイエローみたいやね)。 さらに驚くべきなのは、そんな大御所ソフトメーカーの放つ旧作ソフトのラインナップの濃さです。 もちろんソフトラインナップにイチバン気合いが入れてたのは任天堂で、 過去にリリースしてきたソフトのほとんどがNPに入っているという徹底ぶり! 「スーパードンキーコング」(※14)なんかは、「1」「2」「3」と収録しているあたり、 気合いというよりも怨みすら感じます。 他のメーカーも、 ある程度のセールスを記録したヒット作はたいてい収録させていたし、 アトラスなんかは「女神転生」シリーズすべてを提供するという素晴らしいサービスっぷり。 アトラスは、いわば漢の中の漢、英語で言うとマン・オブ・メンってところですか? ま、ハドソンなんかは、なぜか「キャラバンシューティングコレクション(※15)」という、 よくわからンものまで入れたりしてましたけど、 とにかくNPのラインナップは、イキナリ100本近くのラインナップを引っ提げてスタートしたのです。 すごいぞ! また、今後リリースされていく予定のNP専用の新作ソフトとして、 「ファミコン探偵倶楽部2」のリメイク版や、あの「ファイヤーエムブレム」の続編の名があったりで、 多くのユーザーは、そりゃあもう期待しましたわよ。 ほかにもNP専用ゲームの追加データを配信するとか、 NPならではの連作ゲームの提供など、夢のある企画が次々と発表されていきました(※16)。 また、データのみを販売する形式なので、 カートリッジという在庫を抱えることのないシステム(※17)は、 ゲームが作りやすい環境だと、一部のクリエイターは期待していたそうな。 さらには、諸事情で発売中止になった開発途上のゲームを、 ローリスクで発売できる可能性も高かったのであります。 これはもう、NPに期待するなと言うほうがムリ! もうムリムリ! ムリムリムリムリ!! ※14 スーパードンキーコング: 初代ファミコンの最初のソフトであり、マリオのデビュー作(でも敵キャラ)である「ドンキーコング」の続編。 つっても、その内容はまったくの新作で、CGをモデリングした美麗なグラフィックが話題になった。 製作しているのは、「レア」という海外のソフトハウスで、ロクヨン時代にもイカスゲームを作り続けた。 が、最近は任天堂にソフト提供をしておらず、 先日、任天堂との提携は終了したそうな。 ※15 キャラバンシューティングコレクション: キャラバンとは、ハドソン主催の毎年夏に行われているゲーム大会。 おっさん臭く言うと「ゲーム甲子園」ってところです。 そんなキャラバンの、85年の第1回から87年の第3回まで使用されたソフト 「スターフォース」「スターソルジャー」「へクター87」の3本を収録したソフト。 普通、昔のソフトを移植する場合、アレンジ版も収録することが多いが、 このソフトの場合は、そのまんまを移植しただけだったので激怒するユーザーは多かった。 が、元・ファミコン戦士(第1〜3回キャラバン参加者)は何も言わなかったという。 泣ける話ですね。 ※16 発表されていきました: じつは発表されていません。 正確には、任天堂の広報の方が「こういうことも可能なので出来たらいいですね」と語っていた程度。 ※17 在庫を抱えることのないシステム: 本来ならソフトは、 メーカー→問屋→小売店→ユーザー、の順に流れていく。 もし人気がなくって在庫の余ったソフトは、問屋からメーカーが買い取らなくてはならないが、 NPの場合はデータそのものを販売するので、在庫は存在しないことになる。 わかりやすく例えると、前者が本屋だとすれば後者が情報屋になる。 ・・・余計わかりにくいか。 |
遅いです ニンテンドウパワー さてさて、 大御所ライセンシーの参入や脅威のソフト本数を引っ提げて、僕らの前に登場したNPですけども、 しばらくするとボチボチと苦情が出てくるようになりました。 それは「書き換え時間が長い」というものでした。 「長い」と言っても、時間にすれば4〜5分程度なんですけども、 それはNPが独自のシステムを採用していたからに他なりません。 ここでは、往年の書き換えシステムの「ディスクライター」と比較して、NPの問題点を見ていきましょう。 まずディスクライターの場合、じつは機器自体が通信端末であり(※18)、 新ソフトのリリースがあった場合はこの通信回線を経由して、ソフトデータを引っ張っていたそうです。 しかしディスクライターは、データを蓄積するデータバンクとしての役割だけでなく、 それ自体で書き換え料金の精算をすることもできる、 いわばソフトの自販機のような存在でした。 つまり、書き換えするときは たった1つのディスクライターがすべての作業を行ってくれていたのです。 一方、NPの場合はどうでしょう。 まずロッピーにカセットを差し込み、ソフト書き換えの手続きをします。 するとレシート(※19)がデロデロと出てくるので、それとカセットをレジに持っていき料金を支払います。 そして、やっとこさレジでソフトの書き換えをするのです。 ・・・ハッキリ言って面倒です。 どうしてあなたの街のホッとステーションで、 お役所巡りのような気分など味わう必要があろうか、いやない(反語)。 しかも、先程述べた「4〜5分」という時間は、 厳密にはレジでの書き換え時間のことを指し、 ロッピーで書き換え手続きをしている時間を含めれば、実質10分以上になるのです (おまけにロッピーのタッチパネルは感度が悪いので、余計に時間がかかっていた)。 なぜにNPは、書き換えの手続きがこんなに面倒だったのでしょうか? 詳しいことはわかりませんが、セキュリティの都合上、 MMS(ロッピー)設置の際にレジと連動する仕組みにしたために、 自販機のようなシステムにするのは無理だったそうです。 それにNPは、あくまでロッピーの1コンテンツということを忘れてはなりません。 そのことを考慮すれば、手続きが少々面倒だったことは 任天堂の人も「仕方のないことかもしれません」と語っていました。 ですが、ディスクライターが自販機のような便利な使い勝手だったが故に、 NPは余計に面倒に感じられたのかもしれません。 しかしNP最大の苦情は、 「書き換えしている間が恥ずかしい」だったと思います。 カセット片手にロッピー触ってるときは、激しく恥ずかしいです。 レシートとカセットをレジに差し出すのも恥ずかしいです。 別に悪いことなんかしてないのに、ここまで後ろめたい気分になるのは何故ですか。 無意味にペットボトルのお茶といっしょにレジに持って行ってしまうのは、 便乗商法を狙ったローソンの思惑なのですか。 トドメに書き換えで待ってる間も恥ずかしいです。 レジの前でボーっとしてるのもナニなので、 別に読みたくもない雑誌を読まざるを得ないその姿は、涙なくしては語れません。 「待たせる5分より待つ5分のほうが長い」とはまさしくコレのこと! だが、NPを得る為には避けては通れぬ道なのも事実。 そう。 ニンテンドウパワーを利用することは、 コンビニでエロ本を購入するのと同じくらい度胸が必要なのである(別に必要ないか)! このジャパンという国には、そんな度胸すら持たないチキンたちが多すぎたのだ! イエス! そんな背景がウソかホントか知りませんけど、 コンビニ大好き人間の僕ですら、他の人が書き換えしてるところは見たことがない・・・。 ※18 通信端末であり・・・: 青色ディスクを使用したスコアランキングも、通信端末だからこそできたワザでございます。 が、当時の通信速度は死ぬほど遅かったらしいので、 利用者が少なく通信速度の上がる夜中にデータのやりとりをしていたそうな。 なんだか妖怪人間ベムのようでカッコイイね。 謝罪:この文章を書いたとき、僕は過去の記憶の中で 「ディスクライター」と「ディスクファックス」、 それとパソコンソフトの自動販売機「ソフトベンダーTAKERU」の3つを、完全に混同しておりました。 間違いを指摘してくださった おのぶ様、感謝します。 そして、この文章を読んだ方、ウソ情報を垂れ流して申し訳ありませんでした。 ※19 レシート: ロッピーでの書き換え手続きをした際に発行される。 有効期限は、レシート発行後30分。 もし書き換えに不都合があったときの証明書になるので、 書き換えした人の名前、電話番号も入力されているが (あくまで入力証明用のものなので、本当の名前、電話番号を入力する必要はない)、 ロッピーがスタートしたときは、ケータイがまだ10桁だったので、11桁入力できないというのが微笑ましい。 ちなみに店員さんによっては、書き換えが終了したときに このレシートに書かれてある名前を呼んでくれるので、 オタッキー仲間Mくんは「殿様」「上様」「王様」などと呼ばれてイイ気になっていた。 |
よくがんばった ニンテンドウパワー 「果たしてNPはヒットしたのかどうか?」 これは、スーファミ愛好家たちが8月31日に天に問うたことである。 というのはウソだが、NPがヒットしたかどうかと言えば、答えはノーだと思います。 NPはローソンのみでの事業でしたけども、 任天堂の広報の人は「ユーザーに好評なら他のコンビニにも進出するかも」と答えていましたが、 他コンビニに進出するという噂すら聞かなかったことを考えれば、NPがヒットしていないことは明らかです。 それに、NPが生み出すはずだった夢の計画は、 ほとんどが「夢」に終わってたような気がします。 現実に、NPの利便性を活用した連作ゲームや追加データはけっきょく出てませんし、 NPオリジナルの新作ソフトもユーザーの間で話題を生み出したのは、 結果的には「ファミ探2」と「トラキア(※20)」、「メタルスレイダー」の3本くらいでした (他にもイカス新作はありましたけど、地味でした。 「リングにかけろ(※21)」はある意味話題になったそうだが)。 また、エニックスやスクウェアの参入がなかったのは、 様々な大人の事情があったからと思いますけども、参入を望むユーザーは多かったはずです。 などと思いながら、任天堂のホームページに行って NPソフトの最終ラインナップを調べてみたところ、僕は愕然としました。 この場で懺悔します。 僕は愚かでした。 僕は、NPには連作ゲームがないと言いました。 NPのお手軽さをウリにした新作もあんまり出なかったと言いました。 それは誤りでした。 ありましたよ、NPオリジナルの連作ゲームがっ・・・! しかもそのシリーズは、NPで最も人気があったらしく、 なんとシリーズ第8弾まで発売されていました。 NPオリジナルでしかも連作で、 さらには8作目まで登場していたというNP最大の超大作! そのゲームとは・・・ッ。 「ピクロスNP」(※22)! 地味です。 しかしだ、よく考えてみてください。 だいたいコンビニでゲームを購入する人なんて、ほとんどいません(日経データによると全体の2%)。 仮に購入するとするならば、ライトユーザーくらいです。 でもここで、ある仮説が浮かび上がってきます。 もともとNPのターゲットはライトユーザーに絞られていたのではないでしょうか? 真偽は定かではありませんが、NPのラインナップを見てみると、 ピクロスをはじめ、倉庫番やロードランナー(※23)など、ヘビーユーザーとは縁のないものばかり。 旧作にも、「人生ゲーム(※24)」などのボードゲームや、 トランプなどのテーブルゲームが充実しています。 つまり、NPは普段ゲームをあまりしないユーザーをメインターゲットに マニアにもウケる話題作をぼちぼち投入していった・・・。 そんなナイスな展開をしていたとも受け取ることができるのです。 やっぱりNPは偉大だったンですね。 うんうん。 ゲームキューブが波に乗った今、 スーパーファミコンは完全に役目を果たしたと思います。 スーファミ溺愛家の僕としては、 今でもスーファミソフトが手に入ることはとても便利だったし、 まだまだNPには(僕のために)頑張って欲しかったと感じています。 それでもNPが撤退することは、 やはりこの時期がいちばん正しかったンじゃないのかなぁとも思っています。 だから僕は言いたい。 ありがとう(※25) ニンテンドウパワー。 そして、 さらば ニンテンドウパワー。 書き換えサービスが終了しても、 ロッピーにはカセット差し込み口が残っているのと同じように、 僕のハートにも、キミの存在は永遠に残っているのだよ。 あのフラッシュメモリと同じように・・・。 くっさ〜。 ※20 トラキア: ファミコンから続くシミュレーションRPG 「ファイヤーエムブレム」の第5作目「ファイヤーエムブレム トラキア776」のこと。 シリーズ中、最も凶悪な難易度を誇り、 何度もリセットすることを最前提とした鬼のようなゲームバランスになっている。 それでもシリーズ愛好家たちは、この極悪な難易度にブチキレながらも喜んだ。 ※21 リングにかけろ: 車田正美原作のボクシングマンガ。現在、スーパージャンプにて続編が連載中。 物語は、話が進むほどにだんだんムチャクチャになり、 アマチュアボクシングのルールを無視するわ、試合会場の外まで選手を吹っ飛ばすわ、 試合中に死人が出ても試合続行するわ、必殺技のみで試合が進むわ、とにかくアツイ展開が目白押し。 それを見事にゲーム化する予定だったが、なぜか開発中止に。 数年後NPでリリースされ、一部マニアの間で話題になった。 日本コンピューターシステム(メサイヤ)より発売。 ※22 ピクロスNP: 「イラストロジック」とか「お絵かきロジック」と呼ばれる地味なパズルゲーム (ピクロスとは「ピクチャークロスワード」の略)。 これをNP用にゲーム化、シリーズ化したもの。 発売は任天堂だが、開発はジュピターというソフトハウス。 かつてサテラビュー用に配信された「タモリのピクロス」の製作したところでもあり、 熱狂的タモリファンの間で伝説になっているとかいないとか。 ※23 倉庫番やロードランナー: アクションパズルゲームの古典的名作の二大巨頭。 今まで何度も移植・リメイクが行われている。 ぼくらのファミコンでは、 ルール無用のアイテムが登場した「涙の倉庫番スペシャル」(アスキー)や、 主人公の正体がじつはボンバーマンだったという スゴイ設定の「ロードランナー」(ハドソン)がお馴染み。 ※24 人生ゲーム: 玩具メーカータカラが毎年発売しているボードゲーム「人生ゲーム」をゲーム化したもの。 その年に起こったことをゲーム内の出来事に反映させるため、 ここ数年は「倒産」とか「リストラ」とか暗いイベントが目白押し。 そのせいかどうかは知りませんけど、年々売れ行きが悪くなっているので、 今度は違った路線ものを発売することにし、「猪木版人生ゲーム」というのが発売された。 ※25 ありがとう: アントニオ猪木が引退するとき、演説の最後に言ったセリフ。 ちなみにあの演説が一休法師のコトバより引用されたものだということは、あまり知られていない。 それにしても、本文よりも注釈の方が多くないか? |