ザ・ニンジャウォリアーズ アゲイン
94.1.28 タイトー
【こんなの「ニンウォリ」じゃねぇ!】 「ザ・ニンジャウォリアーズ」こと「ニンウォリ」は、 えっらい昔にタイトーからリリースされたアーケード作品でございます。 独裁国家の大統領を暗殺すべく、 ニンジャな殺人マッシーンがズバズバといてこますアクションゲームで、 そのエンディングでは、任務完了した主人公が爆破→始末されてしまうという結末が、 プレーしたことない人でも知っているほど有名でした。 本作のウリは、3画面筐体という無駄なド派出さと個性的すぎるサウンドが挙げられ、 家庭用にはPCエンジンとメガドライブ(CD)に移植されております。 以上、前置き。 そんな「ニンウォリ」をスーファミでリメイクした作品が 本作「ザ・ニンジャウォリアーズ アゲイン」(以下「アゲイン」)であります。 リメイクというだけあって、ゲーム自体は時代(当時)に合わせたスタイルに変更されており、 シンプルな横スクロール型アクションから、 「奥行きのないファイナルファイト系」へと変貌をとげております。 「奥行きのないファイナルファイト系」ゲームとしては、 スーファミ版「X−MEN」(95年カプコン)が個人的ベストゲームでございましたが、 「アゲイン」はそれを遥かに上回るデキでございます (しかもリリースされたのは「アゲイン」の方が1年以上前)。 そのへんのスーファミ格ゲーよりもでかいキャラが滑らかに動き回り、 かつ敵どもをタコ殴りする爽快感や多彩な必殺技もバッチリ搭載。 そのプレー感覚は「奥行きのないファイナルファイト系」というよりも、 むしろ「ニンウォリ格ゲー風味」という表現の方が適切かと思われるほどです。 本作はタイトーからの発売でありますが、 開発を手掛けたのはナツメであり、 ナツメファン納得のナツメっぷりが炸裂しまくっております。 素晴らしいです、ナツメ (ちなみにナツメは「奇々怪々」のアレンジ版も手がけている)。 が、残念ながら本作「アゲイン」の世間的評価は低い。 特に旧「ニンウォリ」の支持者からは徹底的に叩かれている。 それは、こんなの「ニンウォリ」じゃねぇ!というものである。 その理由として、 まず、旧「ニンウォリ」の顔とも言える演出部分の多くが、 「アゲイン」では削られていることが挙げられます。 「アゲイン」は、「クソでかいキャラが滑らかに動く」と前述しましたが、 この「滑らかに動く」ことからして、旧作ファンからバッシングされているのです。 「全然殺人マシーンっぽくない」からです。 旧「ニンウォリ」の場合、当時のキャラパターンの少なさが逆効果を生み出し、 ガッションガッションと歩く姿が殺人マッシーンっぽさを醸し出しておりました。 でも、「アゲイン」の場合は、フツーにスタスタ歩きます。 キャラパターン多いですから。 また、旧作であった 「ダメージを受けた箇所の人工皮膚が剥がれ、マシーン部分がムキ出しになる」という演出も 「アゲイン」では豊富なキャラパターンを表現するために犠牲にされ、 これもまた旧作ファンから槍玉に挙げられている一要素であります (かわりにゲームオーバー時、全身が爆発してマシーン部が晒される)。 トドメに、こんなの「ニンウォリ」じゃねぇ!と否定される 最大の要素は音楽の作曲者が違うということです。 …なんかアホらしく思えるかもしれませんが、これは無理もない話やと思います。 なぜなら、旧「ニンウォリ」の音楽を担当していたのは、 狂信的な人気を誇るタイトーのサウンド開発チーム「ZUNTATA」であり、 なかでも旧「ニンウォリ」ステージ1の曲は、ZUNTATA作品の中でも 伝説の名曲として位置づけられているからです (当時のゲームミュージックらしからぬ演奏時間の長さや、 曲後半部で掻き鳴らされる三味線サウンドのカッチョ良さは、かなり衝撃的だったたらしい)。 旧「ニンウォリ」と「アゲイン」の共通点は、 ストーリーとニンジャ、防御・宙返りなどの一部アクションだけで、 音楽などの演出部分をはじめとするその他のすべては、完全に別物であります。 故に、「アゲイン」が「ニンウォリ」じゃねぇ!と言われるのは、 当然のことであり、仕方のないことだと思います。 【「ニンウォリ」再び byナツメ】 もう一度言わしてもらいますと、 「アゲイン」は、ナツメの手による「ニンウォリ」リメイク作品である。 そしてそのデキは、ナツメの職人芸が炸裂しまくりの 紛れもなくスーファミ格闘アクションゲームの傑作であります。 ナツメ製アクションゲームの特徴は何かと聞かれたら、 僕はこう答えます。 「少ないボタンで豊富なアクション」と。 それはもちろん本作でも例外ではなく、 「アゲイン」で使用するアクションボタンは、 攻撃(Yボタン)、ジャンプ(Bボタン)、緊急回避用のボム(Aボタン)の3つだけ。 にも関わらず、十字キーとボタンを組み合わせることで いろんなアクションが可能なところは、さすがはナツメ式。 しかも格ゲーのような複雑なコマンド入力は不必要で、 直感とフィーリングとテキトーな操作で 殴りまくり斬りまくり刺しまくり殺しまくりのバイオレンスアクションが ズビズバと出せるのです。 他にもジャンプ中からの派生攻撃や、しゃがみ状態からの特殊アクションに ボムゲージを利用した必殺技とかいろいろありますけども、 いろいろありすぎるので省略。 さて、「ファイナルファイト系」に代表される 格闘アクションゲームにありがちな要素と言えば、 とりあえずプレーキャラが選べることが挙げられます。 はい、ハガーとかコーディとかガイとかいうアレですね。 えー、はい。 やっぱり「アゲイン」も時代に合わせて 3キャラから1体を選択するスタイルとなっております (前作は2P側が色違いの同性能キャラだった)。 旧作の主人公であり、バランス型の「KUNOICHI」、 旧作の2Pキャラだったけどパワーキャラとして生まれ変わった「NINJA」、 そして新キャラで色モノ系スピードキャラの「KAMAITACHI」。 彼らの性能を紹介するにあたって、 バランス型、パワー型、スピード型という表現がわかりやすいでしょうけども、 そういう言葉で彼らの性能をひとくくりにするのは、 じつは「アゲイン」では適切ではないと思ってます。 なぜなら、標準型の「KUNOICHI」以外のキャラ性能は、 かなり濃いからです。 【NINJAでウォォリャァァーッ!】 中でもパワーキャラの「NINJA」は、 ゲーム性そのものを別モノにしてしまうくらいの濃さを誇っており、 その濃厚っぷりは「NINJA」という名に表されるように まさに典定的アメリカ人式勘違いニンジャっぷりが全開なのでございますがな。 敢えて誇張して言わしてもらうと、 「NINJA」なるキャラは、 カンフーとプロレス技を操り、 パンスト被ったジャパンかぶれな巨漢アメリカ人を体現した 重火器搭載ロボット…という具合。 誇張していますが、事実でもあります。 旧「ニンウォリ」と「アゲイン」に共通するアクションに 宙返りというものがございます。 攻撃ボタン押しっぱなしで防御姿勢を取り、 その状態から方向キー+ジャンプボタンで発動される 敵の背後を取るという重要アクションであり、 「ニンウォリ」の代名詞のひとつとも言えるニンジャアクションでございます。 が、困ったことにNINJAにはこの宙返りが存在しません。 というよりも、できません。 他キャラならすんなり行う宙返りも、 NINJAが行えば、まるで肥満小学生児のマット運動。 地面スレスレでブザマに繰り放たれる前後転運動は無防備でスキだらけ。 その間にボコボコにされるだけという 本気で存在意義のない(エセ)ニンジャアクションなのだ! と思ったら、それだけでなく、 なんとNINJAはジャンプすることすら不可能。 ジャンプボタンを押すと、 背中のバーニアを吹かして低空ホバリングするだけ。 飛べません飛べません。 その様は本当に不細工である。 今のうちにツッコミを入れておくと、コイツはぜんっぜん忍者じゃありません。 まさにアメリカ人的カン違いニンジャを モノマネしているだけのようなダメっぷり。 デカイ図体してるので、 他のキャラならしゃがんでるだけで避けられる1面2面のボスの攻撃も しっかり当たってしまいます。 要するに、本作のニンジャなゲームシステムが 全然機能しないキャラ性能に仕上がっているのです。 しかし。 しかしだ。 NINJAの魅力は、そんなアメリカン(?)パワーにあるのです。 己の背後をもカバーするヌンチャクアタックを筆頭に、 バーニア吹かした突進攻撃、 ホバリング状態からのストンピングや高速回転攻撃、 画面半分以上の敵を巻き込むジャイアントスイング、 絶大な攻撃力を誇る股間破壊技ボストンクラブ…。 本作のゲームバランスをも破壊するその圧倒的パワーには、 男ならば間違いなく股間が熱くなることでしょう! 「アゲイン」は暴力ゲームであります。 ザコ敵どもをボッコボッコにいてこます爽快感がウリであります。 で、そう言わしめる最大の要因が このNINJAという勘違いキャラに込められているのであります。 さぁ、みんな! 迫り来るザコどもを吸え!つかめ!振りまわせ! そしてヤツらの股間を破壊するのだ! 【「再び」やってくる戦い】 旧「ニンウォリ」と「アゲイン」に共通するアクションに 「宙返り」なるニンジャアクションがあると言いましたが、 旧「ニンウォリ」にあって 「アゲイン」にはないニンジャアクションがひとつあります。 それはシュリケンです。 旧「ニンウォリ」ではシュリケンを飛び道具として (弾数制限があるものの)ビシビシと敵のドテッ腹に叩き込むことが可能でした。 が、「アゲイン」には、そんなシュリケンが存在しないのです。 では「アゲイン」に飛び道具の概念がないかといいますと、 その答えはノー。 「アゲイン」にも、ちゃんと飛び道具は存在します。 もっとも、その飛び道具というのは シュリケンなどではなく人間魚雷というのが若干異なる部分ではありますけども。 えー、はい。要するに「アゲイン」での飛び道具というのは、 敵を掴んで投げ飛ばすってワケなんですね。 すなはちザコ敵=飛び道具! 基本的にザコキャラは無尽蔵に湧いてくるので弾数制限など存在しないと同義ッ! もう、パワーキャラのNINJAの投げ技が大活躍。 つかんで振り回すことで画面半分を攻撃範囲とし、 投げ飛ばすことで画面端までの攻撃をカバーする! すごいよ!人間魚雷さん! 特にラスボス戦は、 人間魚雷の威力がゲーム中で最も発揮される場面と言っても過言ではなく、 ラスボス戦におけるNINJAの暴力的な性能には、 誰もが惚れることでありましょう。 NINJAさいこー、NINJAラヴ。 さて先程は、 本作に登場する3人の主人公キャラを ・KUNOICHI→バランス型 ・NINJA→パワー型 ・KAMAITACHI→スピード型 と説明しましたけども、 もうちと詳しく説明すると、以下のようになります。。 ・KUNOICHI→初心者向け。前半戦有利。しかし、ラスボス戦ではいちばん苦労する。 ・NINJA→上級者向け。使いにくい。食らい判定のデカイ。でも、ラスボス戦は楽勝。 ・KAMAITACHI→中級者向け。リーチが長いが、投げ技が使いにくい。 本作「アゲイン」は、コンティニューするときにキャラを交代させることが可能です。 したがって、 前半:KUNOICHI→中盤:KAMAITACHI→終盤:NINJA という具合に ゲームオーバーのたびにキャラを変えていけば ゴリ押しプレーで、ゲーム自体はあっさりとクリアできる仕組みになっています。 が、ノーコンティニューでクリアするとなれば、話は別。 初心者向けであるはずのKUNOICHIが、最後にはもっとも難易度が高くなり、 ラスボス戦で最高のパフォーマンスを発揮するNINJAを選べば、 他キャラなら楽勝の1面2面ボス戦で必要以上に苦労するハメになる (他キャラならしゃがめば当たらない攻撃を食らってしまう)。 中級者向けのKAMAITACHIは、投げ技が使いづらい (敵を一発殴ってから方向キー+攻撃ボタンでつかみ状態に入るため、 一撃で倒せる敵は人間魚雷にできない)ため、道中戦で不利。 …という具合に、コンティニュー禁止(あるいはキャラ変更禁止)を前提にすれば、 「アゲイン」の難易度は激烈に上昇するゲームバランスとなっているのです。 まさにナツメマジック! そして、「アゲイン」の真の目的は、 KUNOICHIによるノーコンティニュークリアの達成にあると僕は思ってます。 ブンブン振り回すNINJAやジャキィーンと鎖鎌を発射するKAMAITACHIと比べ、 KUNOICHIのリーチは短く、投げの攻撃範囲も狭い。 そのぶん的確なニンジャアクションを要求されるってワケです。 他キャラなら、てきとーにブイブイ言わしてるだけでも それなりにゲームを進めることは可能ですけど、 KUNOICHIでは、中盤以降のゴリ押しプレー=死へのカウントダウン! 無駄のない動きでチュピチュピと殺っていくプレースタイルが求められるのです。 ハッキリ言って地味です。 本作のウリである爽快感はありません(※パターンゲー好きにはある意味オモロイ)。 で、このKUNOICHIプレーに耐えているうちに 不思議なことに、そのプレー感覚が、 旧「ニンウォリ」にかなり近いと思えるような錯覚に陥ります。 僕は思うのです。 この錯覚(勘違い)こそが、 「アゲイン」の真髄ではないかと。 確かに「アゲイン」は、表面的な部分では「ニンウォリ」じゃねぇ!かもしれません。 だからと言って、「アゲイン」は 決して初代「ニンウォリ」を冒とくしている訳ではないことが KUNOICHIプレーで初めて理解できるのです(妄想含む)。 「アゲイン」は、紛れもなくスーファミ製格闘アクションの傑作です。 同時に、初代「ニンウォリ」の正統進化した姿であり、 ナツメによる「ニンウォリ」への愛と敬意の結晶でもございます。 それは、ナツメから旧「ニンウォリ」ファンに宛てられた リターンマッチの挑戦状であると 僕は信じて疑わないのであります。 |