新機動戦記ガンダムW〜ENDLESS DUEL〜
ACT 96.3.29 バンダイ
「新機動戦記ガンダムW〜ENDLESS DUEL〜」は格闘ゲームである。 しかし本作は、ただの格闘ゲームではない。 なんと!腐女子好みの美少年どもが汗水垂らしながらハァハァ言わせる おもいっきりターゲットを絞った格闘ゲームなのである! というのはもちろん大ウソで、 なぜかガンダムどもが格闘する、超ありがちなゲームでございます。 皆様の想像の通りですね。ご安心ください。 んでもって発売してるのは、やっぱりバンダイです。 さて、ここで皆様に質問です。 スーファミの格ゲーで、さらにキャラゲーで、ついでに発売元がバンダイである。 こんなゲーム、やりたいと思いますか? 「んなもン、ク○ゲーに決まってるでしょ?」と、瞬時に思った方は正常です。 ちなみに僕は、スーファミ格ゲーは、 「スト2」シリーズ以外はまったく評価していません。 なぜなら、スーファミ全盛期の91年〜95年は(長いので省略)・・・であり、 格闘ゲームの爆発的ブームが起こった92年〜94年と(同理由で省略)・・・おり、 その間に乱造された(省略)・・・で、 ゲーセンでヒットした作品を(省略)・・・もあり、 同様に、家庭用オリジナルの作品に(省略)・・・からです。 以上の理由により、僕も「ガンダムW」をク○ゲーだと思ってました。 この作品が敬遠された理由は、ごくごく単純なことだと思います。 まず理由その1:「キャラゲー+格ゲー」の最悪な組み合わせが 多くのユーザーに「どうせク○ゲーでしょ」というイメージを抱かせてしまったこと。 前作「Gガンダム」が、やはりキャラゲーな格ゲーで 当然のことながらク○ゲーだった事実も、マイナスイメージの要因であることは容易に想像できます。 次に理由その2:当時の家庭用オリジナルの格闘ゲームは、 その閉鎖的なプレー環境のため、どうしてもマイナーな存在でしかなかった (当時はインターネットが普及していなかったので、 なおさらだったのでしょう)。 で、理由その3:格ゲーというジャンルは、当時(96年)すでに成熟期に突入しており、 一般ゲーマーにとって格ゲーは、 「ついていけないもの」、 「マニアだけのもの」というところまで来てしまっていた。 トドメに理由その4:このゲームの発売時期(スーファミ末期)には、 格ゲーやる奴は、たいていプレステ・サターンを所有していた (でも僕は持ってませんでした)。 僕のまわりでも、アンソニーは「鉄拳」や「ストZERO」に狂喜乱舞し、 セガールは「バーチャ」や「ヴァンパイアハンター」で悶絶しておりました。 はい。スーファミの格ゲーは、見向きもされなかったのです。 要するに「ガンダムW」は、 いかにもク○ゲーっぽい雰囲気がプンプンするうえに、 時期的な理由からも、プレーされることが少なかったという マイナーゲームのストライクゾーンなンですね。 では、「ガンダムW」は、いったいどんな格闘ゲームなのでしょうか? ・・・。 ・・・・・・。 えー、パッと見は「ただのガンダム格ゲー」です。 登場するキャラクターは9体(とボスキャラ1体)。 現在の格ゲーからすると少なめのキャラ数となっておりますが、 せっかくなので、その面々を紹介することにしましょう。 主人公ガンダム、変なガンダム、熱そうなガンダム、 ゴツそうなガンダム、中華風ガンダム、パワーアップしたガンダム、 ガンダムのプロトタイプ(敵)、ガンダム機体をベースにした機体×2(敵)、 で、ボスキャラは悪そうなガンダム、以上。 ・・・全部ガンダムかよ!! イエス、全部ガンダムです。 このゲームは、そんなガンダムどもがドツきあうゲームでございます。 ハッキリ言っておきますけど、その姿はかなり違和感ありまくり。 ガンダムが3本勝負をする! ガンダムが足払いをする! ガンダムが昇竜拳を出す! ガンダムが投げ技を繰り出す! ガンダムが頭突きする! ガンダムがシールドで殴る! ガンダムがバズーカ砲を振り回す(殴るために)! すげぇ不自然です。 どのくらい不自然かといいますと、 原作ファンが拒絶反応を起こしてブッ倒れるくらい。 「なぜガンダムが格闘しなけりゃイカンのだ!」と思うこと請け合いで、 間違っても感情移入は不可能です。 じゃあ「ガンダムを抜きにした思考回路」をもって、 開き直ってプレーしてみるとどうでしょうか? ・・・。 ・・・・・・。 えー、なんちゅーかフツーの格闘ゲームです。 強いて特徴を挙げますと、 前後ダッシュ、チェーンコンボ、空中ガード、空中コンボ、超必殺技、 追い打ち攻撃、ガードキャンセル、投げ抜け、などといった、 スーファミ格ゲーのわりにしっかりとしたシステムがあるくらいです (逆に言えば、プレステ・サターンのゲーセン移植作品では常識のシステム)。 まぁスーファミにしては、キャラクターが大きめとか、 スピーディーに動き回ったりしているのですが、あくまでその程度です。 感想:スーファミ格ゲーとしては、よく頑張ってるね。うん。 そんな感じで、僕はこのゲームをプレーしておりました (説明書ナシの状態で購入したので、てきとーに必殺技を探しながら)。 もちろん対戦してくれる人なんかいないので、ひとり寂しく黙々とプレーです。 約10分経過。 「ほぅ、こんな技が繋がるンかい。」 連続技が繋がるとけっこう楽しいです。 約20分経過。 「けっこうCPUが強めに設定されてるンやなぁ。」 難易度ノーマルでも、敵さんがカッコイイ連続技を平気でかましてくれます (例:ダッシュ攻撃から浮かせ→ジャンプ攻撃→空中必殺技→ダウン攻撃)。 そして、30分が経過しようとしてたとき。 僕はあることに気がついた。 それは、今までの格ゲーでは見たこともないような光景でした。 なんと、敵さんが防御しながらダッシュしています! なんじゃこりゃァァァァッ!! ついでにすごく高いジャンプもしています! 空中ダッシュもしていますよ!(気づくの遅すぎ) が、困ったことに「防御ダッシュ」や「すごく高いジャンプ」のやりかたが わからなかったので、攻略サイトにご相談。 「攻撃ボタン同時押しで発動します。」 アイシー。 「ボタン同時押し」で、「ブーストジャンプ(正式名称はこう呼ぶらしい)」。 もう一回「ボタン同時押し」で2段ジャンプ。 or「レバー入力+ボタン同時押し」で空中ダッシュ。 「ブーストジャンプ」後に下入力で、落下速度を落とす「ホバリング」。 地上で「レバー入力+ボタン同時押し」で「ガードダッシュ(正式名称)」。 このゲームには、 じつはこんなにたくさんの特殊操作があったンですね。 で、これらを知った瞬間、 塩水で芋を洗うことを知ったサルのように、 否ッ、オナニーを覚えてしまったサルの如く、 このゲームのプレースタイルが激変しました。 ボタン同時押しと十字キーの組み合わせという カンタンな操作から繰り出されるこれらのアクションは、 僕の中で「戦いの高速化」を引き起こしていったのです。 敵の放つ飛び道具を「ガードダッシュ」でかいくぐり接近ッ! そして、硬直している敵を投げるッ! 敵のダッシュ攻撃を先読み、いやダッシュ攻撃してきたのを見た瞬間、 「ブーストジャンプ」で空中へ飛ぶ! そこから空中ダッシュを発動して、敵の背後に回り込む! 連続技を叩き込むッ!! チェーンコンボがガードされてしまった! 直後、反撃を回避するために「ブーストジャンプ」で瞬時に空中に逃げる! そのまま空中から奇襲ッ! ・・・と見せかけ、着地した瞬間に投げをキメるッ! と思ったら投げ抜けされてしまった!おまけにその直後に必殺技を出してきやがった!! が、それを冷静に防御し、そこからガードキャンセルで超必殺技でお返しするッ!!! これらの攻防、その間、わずか数秒ッ!! こんな具合に、プレーをするごとに、自分自身の動きが 異常なまでにスピーディーになっていったのです。 そして僕は思った。 「なんちゅーアツイゲームなんだ!!」と。 これらの特殊アクションは、全キャラ共通して備えているので ゲーム後半になれば、もちろん敵さんも超スピードでの攻撃を繰り出してきます。 が、これらの攻撃を肉眼で確認できるようになると、 このゲームはがぜん面白さを増してきます。 その熾烈な攻防・爽快感は、当時のメジャータイトルにも引けをとってませんし、 現在でもじゅうぶんに通用する面白さ、 いや、CPU相手の格ゲーで、こんなに面白いゲームは今まで存在しなかったと、 声を大にして言いたいくらいであります。 「百聞は一見にしかず」とは言いますけども、 このゲームは「一見は100プレーにしかず」というコトバがピッタリです。 なぜなら「ガンダムW」には、その独特のシステム故に、 やり込まないとわからない、やり込みまくってやっとこさ理解できる部分というのが かーなり多いからであります。 さきほど述べた「ヤケクソに高速な攻防」は、 ボタン同時押しから発生する特殊アクションが大前提になっているので、 それらを使いこなせなければ、 よくある「ただの格ゲー」になってしまいます(僕が最初そう感じたように)。 他にも、格ゲーの基本テクニックである「キャンセル」に、 「ガンダム」の場合はかなり特殊な制約が設けられています。 本来なら、通常技の終わりモーションを必殺技を発動することによって 技のスキをキャンセルすることができますけども、 本作では、通常技→キャンセル必殺技というコンボは、 通常技を防御されると繋がらない (キャンセル必殺技を入力しても、通常技がガードされてると必殺技自体が出ない) というシステムになっています。 したがって、ヒット確認したうえでキャンセルをかけなきゃいけないワケでして、 それはそれで、目押しな感じでアツイですが、 そのシステムを理解していないと、 ただの操作性の悪いゲームにしか見えません。 つーか、フツーはそんなシステムに気づきません。 さらにスゴイのが、キャラ性能の濃さ。 いや、キャラ性能のヒネクレっぷり。 どいつもこいつも一筋縄ではいかない奴らばかりで、 パッと見の性能と、実際にやり込んでわかる性能とのギャップは、 格ゲー史上最高峰と言っても過言ではありません。 たとえば、一見スタンダード系の「ウィングガンダム」が、「カウンター型」。 トリッキーな技を持つ「デスサイズ」が、じつは「一発逆転タイプ」。 火力が豊富な「ヘビーアームズ」が、見かけとは正反対に「投げキャラ」。 防御力が高く、コマンド投げを持つ「サンドロック」が、ホントは「連続技系」。 通常技のリーチが長い「シェンロン」は、接近戦での「二択」で真価を発揮する。 わかるか、ンなもん。 他にも、原作では防御型の機体の「メリクリウス」が、ゲームでは「超攻撃型」、 一方、豊富な武器を持ってるはずの「ヴァイエイト」が「中距離でチクチク殴る型」などなど、 基本的に原作の設定が邪魔するキャラ性能に仕上がっております。 こんな感じですから、このゲームは原作を観てないほうが楽しめます (「ガンダムW」を途中までしか観てない人:談)。 「ガンダムW」はキャラゲーである。 しかも、家庭用オリジナルの格闘ゲームである。 よってライトユーザー向けのゲームだと、誰もが思う(当然です)。 しかし、その正体は、激しくマニアックで 一般人にはついていけないほどのテクニックを要求される まさしく格ゲーマニアのためのゲームだったのです。 (格ゲーマニアじゃないと、たぶんノーマルモードもクリアできないと思う)。 つーか、このゲームはいったい誰に売りたかったンでしょうか? 後でわかったことなンですけど、 「ガンダムW」を開発したのは、職人的プログラマー集団「ナツメ」でございます。 バンダイが発売、ナツメが開発とを知ったときは、 その意外な組み合わせでビックリしましたけども、 同時に、思わず納得もしてしまいました。 なぜなら、「ナツメ」スタッフの人たちは、アーケードゲーム好き(らしい)だからです。 ゲーセン好きの人たち=硬派ゲーマーな方々が作るゲームが、 普通であるはずがない、と。 そして僕は、あることに気づきました。 「ガンダムW」にはカプコン製の格ゲーとの共通点が、 数多く存在しているということに。 たとえば、やたらと機動力のあるブースト(しかも簡単なボタン操作で出せる)を駆使した戦いは、 ロボットものの格ゲー「サイバーボッツ」を彷彿させます。 「ブーストジャンプ」に至っては、操作方法こそ違うものの、 強制キャンセルが可能だという点では 僕が愛する格ゲー「X−MEN」の「ハイパージャンプ」とソックリです (ちなみにダウン攻撃は、まんま「X−MEN」ですし、 必殺技コマンドがどれも簡単なものばかりという点でも同じです)。 また、ヤケクソに高速なゲームスピードやクセのあるキャラを使いこなすというプレー感覚は 「ヴァンパイア」に共通するものがあり、 感涙してしまうくらいソックリな技も登場します。 そう、「ガンダムW」はキャラゲーの姿を借りた カプコン格ゲーのオマージュだったのです(独断)。 かつて格闘ゲームを心を奪われた人々は、 「スーパーストリートファイター2X」が、 スーファミに移植されなかったことを嘆いた!(「3DO」欲しくねぇよ) ネオジオの格ゲー移植作品が、 どうにもこうにも駄作ばっかだったことに憤慨した!(それでも我慢したけどよ) だから彼らは、プレステやサターンを買って狂喜乱舞したッ! しかし、プレステ・サターンという次世代機(当時)を買えなかった格ゲー愛好家も 確かにそこに存在していたのであります(たとえば僕)。 格闘ゲームを愛しているのに、貧乏ゆえにスーファミしか持ってなかった奴。 そういう奴らのために、格闘ゲームを愛する人たちが作ったのが、 じつはこの「ガンダムW」だったのです(もちろん独断だ!)。 もう一度言う。 「新機動戦記ガンダムW〜ENDLESS DUEL〜」は、 スーファミ格闘ゲーマー(=貧乏格闘ゲーマー)へ捧げらた 最高のプレゼントだったのであります!!! と同時に、リアルタイムでこのゲームをプレーしなかったことと、 出会うのが遅すぎたことを、本当に残念だと思うのでありました。 余談:プログラマーの卵だった友人Y氏は、 このゲームを見たときに、そのプログラム技術の高さに腰を抜かしたそうです。 プログラムのことはよくわかりませんが、 「ガンダムW」からは、製作サイドの知恵と工夫の数々を読み取ることができます。 たとえば、少ないキャラクターパターンでも不自然に見えないような見せ方、 グラフィックの使いまわし方、効果音の使い方などなど、どれをとっても一級品でございます。 格ゲー好きなら、迷わず買え! |