〜誰もやらなかったのでやった価値があるのか/やる価値がないので誰もやらなかったのかは問うてはならない企画〜
 


 「サイバーナイトII 地球帝国の野望」は、
 94年にスーパーファミコンでリリースされたマイナーRPGである。
 テーブルトークRPGの大御所「グループSNE」が手掛け、
 同代表である安田均が監修、「ロードス島戦記」の水野良がゲームシステムデザイン、
 「と学会」のボスとして知られる山本弘がシナリオ担当をしている。
 予め断っておくが、ゲームとしては微妙なデキである。

 そんな「サイバーナイトII」の敵キャラ名称は、じつはアメコミが元ネタとなってる。
 僕自身が本作をプレーしたのは96年。
 当時、「敵キャラ名がアメコミっぽくてカッコイイなぁ」と漠然とながら感じていた。
 そして時は流れ、あるとき何気にネット上にある「サイバーナイトII」の攻略サイトを見ていると、
 以前は気付かなかった(知らなかった)アメコミキャラがいる(?)ことに気付いたのだ。

 もしかしたら、「サイバーナイトII」の敵キャラ元ネタは、アメコミではないのか?

 直感的に、そう思ってしまったときの心境は、
 カッコよく言えば「大陸移動説」を提唱したウェーゲナーに降りてきたインスピレーションに近いだろうか。
 かくして僕は、ネットのチカラを借りて
 「サイバーナイトII」に登場する敵名の元ネタが、アメコミキャラであることを検証することにした次第である。




敵の属性  敵名称  かいせつ
 地球軍が開発した
 「メタリフォーム」
 ヴィジランティ 直訳すると「自警団」。
都市部の治安を守るヒーロー全般を指すが、
80年代のDCコミックに同タイトルの単発作品が存在する
(映画「ウォッチメン」で知られるアラン=ムーアが手掛けている)。
 ガーディアン MARVEL界の老舗マイナーチーム「アルファフライト」のリーダー。
 マンハンター ヒーロー名は「マーシャン・マンハンター」。
DCコミック界の地球で暮らす火星人。
 ブラックスパイダー 映画「スパイダーマン3」でお馴染みになった
黒スーツ装備のスパイダーマンか。
と思ったら、DCコミック界のヴィランでした(バットマンと対決したことあるらしい)。
ちなみにその容姿は、スパイダーマンの完全パクリ。すげぇ。
 タランチュラ DCコミックに3キャラクター。
MARVELコミックには2キャラクター存在しているらしい。
いずれにしろ、全部どマイナーキャラの様子。
 ハルク 映画にもなった緑色の二重人格ヒーロー「超人ハルク」。
 スワンプシング DCコミック作品。植物と同化したヒーロー。
小学館プロダクションから日本語版のコミックも発売されている。
 ウォーロック 「X-MEN」の二軍チーム「ニューミュータンツ」に属していた地球外生命体。
あるいはMAEVEL界の重要人物アダム=ウォーロック。
後者はカプコン製格ゲーに登場している。
 ウォーロード 1975年にDCコミックによって生み出された
剣と魔法の世界のヒーロー。
後に現実世界(DCユニバース)へ進出する。
DC版マイティ=ソーみたいなもンかと思われる。
 ブームブーム 「X-MEN」の二軍チーム「ニューミュータンツ」に属していた
発光弾を操る女性ミュータント。
 キャノンボール 「X-MEN」の二軍チーム「ニューミュータンツ」に属していた
ジェット飛行能力を持つ青年ミュータント。
 ターミネーター シュワちゃんの代表作であるが、ここで元ネタにされたのは
ダークホース社から刊行された「VSターミネーター」シリーズ。
 パニッシャー MARVELヒーローの中では珍しい「ただの人間」。職業は殺し屋。
映画化されたが、それをさかのぼることずいぶん以前に
じつはカプコンのアーケード作品としてリリースされていたりする。
 ギャンビット 日本では「ガンビット」という呼び方で定着している
「X-MEN」のキャラクター。
カプコン製格ゲーに登場しています。映画にも登場しています。
 ローグ カプコン製格ゲーに登場している「X-MEN」のキャラクター。
ちなみに映画版「X-MEN」の設定は、完全別モノ。
 サンダーボルト ハルクの宿敵こと、サンダーボルト=ロス将軍。
ただの人間らしい。
 ロングショット 一時期「X-MEN」に協力していた異次元世界の住人。
幸運を引き寄せる能力を持つ。
 ナイトクローラー 映画「X-MEN2」に登場した、テレポート能力を持つミュータント。
じつはコナミ製「X-MEN」のメインキャラのひとり。
 メタルマン 1962年に誕生したDC界のヒーローチーム(正確にはMetalMenと複数系)。
メンバー全員がロボットで、それぞれのキャラクターには
金属の名前が冠せられていた。
 アイアンマン カプコンの格ゲーに登場しました。
単独タイトルでアニメ化+ゲーム化されました。映画にもなりました。
2010年、日本製でアニメ化もされました。
 ウオッチャー MARVELコミックの世界で傍観者を務めるキャラクター。
頭のカタチが「おそ松くん」のチビ太に似ている。
 モニター ↑のDCコミック版。
DC世界を監視しているキャラクター。
 ブルービートル 「魔法のスカラベ」のチカラを借りて変身するDCコミック界のヒーロー。
このキャラクターが誕生したのは戦前とのコト。 
 クイックシルバー 「X-MEN」最大の敵であるマグニートーの息子。
高速移動能力を持つ。
 ストーム 「X-MEN」の中で最も有名であろう女性キャラクター。
ゲームや映画で優遇されまくっています。
 ハヴォク 「X-MEN」のリーダー:サイクロップスの実弟。
全身からプラズマブラストを発生させる能力を持つ。
 チーター DCコミックの有名キャラ:ワンダーウーマンのメイン敵キャラ。
 パンサー ストームの旦那、ブラックパンサーのことか?
と思ったら、DCコミック界には「パンサー」というヒーローがいるらしい。
 ブレイアニック 「サイバーナイトII」のラスボス。
しかし、その元ネタはなんとDCコミック界のマイナー敵キャラ。
敵の属性  敵名称  かいせつ
 メタリフォームに侵食された人間
 「サイビーイング」
  ※ゲーム中では
  「ゾンビ」と表現されている
 ドールマン 元ネタ不明。
「サイバーナイトII」では石像型のキャラクター。
doormanというキャラクターが元ネタになっていると推測…するのは邪推か。
 ラモン 「サイバーナイトII」内における、敵対国家の大統領。
アメコミ作品に元ネタは無いと思われる。
 ファントム 元ネタの特定は出来ず。
MARVELに「ファントムライダー」というキャラがいるそうな。
DCには「ファントムストレンジャー」というキャラがいるそうな。
 サイボーグ DCコミックの「ティーンタイタンズ」のメンバー。
日本ではアニメ版がお馴染み。
 ライラ 一時期「X-MEN」に登場していた女性シンガーミュータント、
ライラ=チェイニィが名前の由来?
ラモン大統領の妻なので、偶然の一致である可能性も。
 スケアクロウ DCコミックの「バットマン」に登場するヴィラン。
ゲーム作品にも登場しています。
 ファング 「X-MEN」に登場する宇宙帝国シーアーのインペリアルガードメンバー。
 トリフィド 「トリフィド」とは、もともとSF作品に登場する架空の肉食植物。
オリジナルである「The day of The Triffids」というSF小説は
映画化もされているが、アメコミ化されているかどうかは不明。
敵の属性 敵名称  かいせつ
 「惑星エルドラド」棲息生物
 ※「メタリフォーム」かは不明
 ブルーデビル DCコミックのヒーロー。
「ブルーデビル」なる特撮映画の撮影中に魔法のチカラで
期ぐるみが肉体と同一化してしまった、という設定。
本人はクリスチャンであるが、設定が悪魔なので教会に入れないらしい。
 シャドーデーモン DCユニバースにて登場した悪役キャラクター。
宇宙レベルでの邪悪なチカラを具現化した存在だそうで、
DCユニバーススケール作品に登場したらしい。
 スペルバウンド 直訳すれば「人を夢中にさせるもの」の意。
もともとは50年代にMARVELより刊行されたタイトルとのコトだが、
88年にムチムチのおねーちゃんが主人公になってリメイクされた。
が、人気は無かったらしくて6話で打ち切りとなったそうである。
 ウィザード MARVELチーム「ファンタスティックフォー」に対を成す悪役チーム
「フライトフルフォー」のメンバー。
もともとの立ち位置としてはヒューマントーチのライバルらしい。
MARVEL重鎮のスタン=リーとジャック=カービィによって生み出された。
 アッダー adderとは「〜を加える者」の意で、
MABEL界には「パフアッダー」「デスアッダー」という2キャラが存在する。
前者はキャプテンアメリカの敵。
後者はアヴェンジャーズと敵対する組織のメンバー。
 クリーバー 「包丁・ナイフ全般」転じて「切り裂く者」という意味であるが、
その名詞が冠せられたアメコミキャラは残念ながら見つけられず。
アチラで長年愛され続けているホームドラマ(いわゆるサザエさん)一家が
クリーバー姓なのであるが、コミカライズはされていないそうである。
敵の属性 敵名称  かいせつ
 対人間用兵器or人間そのもの  ファットマン ごく短期間だけ存在したアメコミ出版社:ライティングコミックの作品
「ファットマン:ヒューマン・ザ・フライングソーサー」なる
すんげぇマイナーな作品(わずか3話で終了)が元ネタ。
…どんだけマニアックなんだ。
 ボディーガード そのまんまの名称なので、たぶん元ネタ無し。
つーか、わかりませんでした。
 ワイルドキャット 韓国人アーティスト:ジム=リーが独立して発表した作品
「ワイルドキャッツ」が元ネタと推測される。
…と思ったら、DCコミック界に同名キャラがおりました。
「ワイルドキャッツ」が刊行された時期から察するに、
DCコミックキャラの方が出典元の可能性が高い。
 ウルヴァリン いわずとしれた、ぼくらのヒーロー。
 スペクター MARVELとDCの両方に同名キャラがいるが、
メジャーなのはDC作品に登場する方。
肌の色は灰色で、パンツ一丁に緑のフード尽きマントを纏う。
MARVEL界にソックリさんがいるが、コチラの方が遥かに歴史が古い。
 ゴーストライダー MARVELヒーローのひとり。
顔がまんまガイコツで、とてもヒーローとは思えない風貌が特徴。
ニコラス=ケイジ主演で映画化されてます。
 ソルジャー DCコミックに「アンノウンソルジャー」というキャラがいるが、
たぶん元ネタは無しだと思われる。
 テロリスト これも元ネタは無しであろうかと。
暴力にモノを言わせるヴィランの総称ではあるのだけども。
 ストーカー 本作が発売されたのは、
「ストーカー」が「つきまとい」を意味するようになる以前のこと。
元ネタは、70年代のDCコミック作品タイトルでした。
 ナイトストーカー 一方コチラはMARVEL作品。
92年に「ナイトストーカーズ」というタイトルが刊行されている。


 【余談その1】
   ゲーム中には、地球軍が開発しているモジュール(いわゆるロボット)も敵キャラクターとして登場するが、
   それらはアメコミとはまったく関係のない設定なので、割愛させていただいております。
 【余談その2】
   「サイバーナイト」シリーズは、シナリオを手掛けた山本弘氏によって文庫版が描かれています。
   ゲーム作中では語られることのないSF設定解説本、「I」のノベライズ作品(上下巻)、「II」のノベライズ作品の合計4冊。
   なかでも本作の設定を解説した「サイバーナイト ドキュメント戦士たちの肖像」は、
   読み物として純粋に面白いだけでなく、SF入門書としてもオススメです。
 【余談その3】
   ゲーム単体だけでは細かな物語設定を読み取ることはできませんが、
   小説版では「I」の敵キャラ名がファンタジー系な理由として、「戦闘AIが童話好きだから」という描写があります
   (未知の敵と遭遇した場合、戦闘AIが敵名を命名するという設定である)。
   しかし、その一方で「II」の小説版では、「メタリフォーム」を開発した科学者が勝手に命名してしており、
   「I」の敵キャラ名がアメコミに由来している理由(または、その経緯)についての言及は全くありません。
 【余談その4】
   「サイバーナイトII」の敵名の元ネタがアメコミであるということは、公式に明言されておりませんが、
   ずいぶん前にmixiでそのことをネタにしたところ、
   グループSNEの方から「山本弘はアメコミ好き」という旨のコメントが寄せられ、
   「サイバーナイトII」の敵キャラ名の元ネタはアメコミである事実が判明しました。
 【余談その5】
   「サイバーナイトII」のゲーム作品および小説の中(またはそれ以外の場も含め)
   敵名がアメコミに由来することを公にしなかった理由は、
   「公にする必要が特になかった」のだと推測されます。
   つまり、ノリと気分でなんとなくアメコミキャラから引用したのではなかろうか、というワケです。
   作り手側にとっては、あくまでお遊び。
   きっと「イースターエッグ」のような立ち位置に分類されるのでしょう。
   とは言えど、その元ネタをこうやって調べていくと
   お遊びと呼ぶにはあまりにもマニアックすぎるネタもあり、
   「サイバーナイトII」の製作に携わったグループSNEのセンスに、ただただ脱帽する次第でございます。
 【余談その6】
   元ネタを検証するにあたっては、
   アメコミ大好きな方々によって綴られた「虹裏アメコミWiki」を参照させていただきました。
   それでもウラが取れなかったキャラ名に関しては、米国版ウィキペディア
   (キャラ名+comicでWiki内検索)を活用させていただいております。






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