第2回 世界を構成する物質。

 哲学のテーマってのは
世界がどこから来てどこに行くのか」であるとよく言われますけど、
よくある
人間の存在意義を問い始めるのは原始哲学よりもだまだ先の時代のことでして、
とにかくすべての存在は
によるものだとされたワケです。
自然のメカニズムを説明したいと考えた人間は、
科学のなかった時代に神話を考え出したのでした。
つまり、すべての自然現象は神のチカラであり、
人間にとって都合のいいこと悪いことってのが善VS悪の神話として描かれたワケです。
こうして人は世界に理由を求め、神話がそれに答えるという宗教的な図式が完成しちゃったのです。

 これに対して、ある哲学者はこう批判しました。
人間は人間の神をつくるのと同じようにライオンはライオンの神をつくる」と。
わざわざライオンじゃなくってゴキブリでもかまいませんし、いっそのことサナダムシでもいいです。
ここでは、動物に「神」という概念を創り出す知能があるかどうかは別にして、
人間が創り出した神が、人間のためだけに存在することを批判してるのです。
世界にはもちろん、人間以外にも生物はたくさんいますが、
この世界の構造が、人間のためだけに存在する神によって構成されているのは明らかにおかしいワケですね。
そこで
古代ギリシア時代の哲学者は、
自然現象を
神の視点とはまた違ったところに関心を持ったのでした。

 ところで、ゲームによく登場する
火・水・土・風の四大元素ってご存知でしょうか?
この四大元素について知ってる人は多いと思いますけども、
どんな過程でこの思想が誕生し、メジャー化したのかは知らないと思いますので、
今回はこの四大元素についてご紹介いたします。

 古代ギリシアの哲学者は、世界について考えたとき
この世界を構成しているのは「
元素」のカタマリであるという結論に達しました。
この元素が混ざり合って様々な「もの」を形成していると考えたワケですね。
元素によって世界が構成されているというのは、
自然法則が神様とは違うところで成り立っているという
画期的な考え方でもあったのです。
こういう考えを持っていたギリシアの哲学者のことを「
自然哲学者」って呼びます。
この自然哲学者のメジャーな面々を順番に見ていきましょう。

 まず、自然哲学者の
元祖として登場するのが、
紀元前500年代に生きたターレスという人です。
このターレスというオッサンは、世界を構成する物質の起源が「
」であると提唱しました。
おそらく彼は、大地だとか花やら動物などの自然物に水が含まれていて、
その水が「生命の起源である」と考えたンでしょうね。

 それとほぼ同時代に登場するアナクシマンドロスという
スゴイ名前の人は、
世界は「アペイロン」でできていると考えたそうな。
「アペイロン」ってイキナリ言われても困りますね。
無限定」という意味だそうです。
ただカッコつけてみたくって、わざわざ「アペイロン」と書いてみました。
「無限定によって世界はできている」と書くと難しいですが、
アナクシマンドロスが考えていたのは、
ターレスのような、特定の元素で物質は構成されているといったものではなく、
なんかよくわからンけどあるひとつの元素が存在している」と考えたみたいです。
つまり「元素は1種類だけど、その正体はわからない」というワケです。
無責任ですね。

 で、さらに同時代を生きたのが、またまた
穴絡みエロい名前のアナクシメネス。
この哲学者が唱えたのは、
世界を構成する物質が「
(プネウマ)」によってできている、ってコトでした。
「息」が元素であると考えたら、オッサンの口臭を想像してしまい
すごくイヤーンな気分になっちゃう方もいると思いますが、
そういう場合は「息」というのは「
空気」のことであると割り切ってください。
これで夜も安心。

 これら3人の哲学者は、ミレトスというところに住んでいたので
ミレトスの三賢者というそうです。
まぁ、シブガキ隊や少年隊みたいなもンだと考えていただければオッケーです。
話は横道にそれますが、ワタシは
シブガキ隊と少年隊を最近まで同じと思っていた阿呆です。
とにかくだ、ミレトスの三賢者の考えに共通しているのは、
自然界のあらゆる変化の根底には1つの元素がある」ということでした。
つまり世界を構成する物質である「元素」は
1種類である、と考えていたンです。

 さて、ここでちょっと時代を飛ばして、紀元前400年頃の哲学を見てみましょう。
ここで登場する哲学者はデモクリトスという人で、なんと「
原子論」を提唱したのでした。
この原子論は、今でいう原子論とまったく同じ考えで
原子が世界を構成している最小物質であり、
すべての自然現象は原子の動きによる法則がある
」というものです。
もっとも、現代の化学のように「水平リーベ 僕の船ェ〜♪」のようにどんな原子があるのかはわかっていません。
デモクリトスが唱えた「原子論」は、
あくまで「世界は原子でできてるんだろーなー。」という
推測だったところがミソです。
それにしてもだ、いくら推測にはすぎないと言えど、
科学の発達していない時代に原子の存在があると考えたことはかなりスゴイことであります。

 さぁ、
いつまで経っても四大元素のハナシが出てきませんね。
今のうちにオチを言っちゃいます。
四大元素の思想は・・・・・・哲学上ではすごく
マイナーな部類になるンです。
ミレトスの三賢者の「一元素論」は、
世界が神とはかけ離れた場所にあるという論理的な考えの元祖として有名です。
デモクリトスの「原子論」に至っては、現代でも通用する考えとしてメジャーです。
じつは四大元素の考えってのは、ミレトスの三賢者が活躍した時代と
デモクリトスの時代の間に
はさまれた時代に発生したものなんです。

 その時代は、紀元前400年半ば頃。
エンペドクレスという人が「
世界はたったひとつの元素からは成り得ない」と考え、
四大元素論」なるものを考えたンです。
つまり火・水・土・風(正確には「風」ではなく「空気」らしいが)という4つの元素があり、
それらが様々なバランスで混ざり合ったものが、この世に存在する物質ってワケです。
しっかし、この考えの弱点は
「これらの元素がどういう条件で結合・分離されるのか?」がわからなかったことです。
この疑問に対してエンペドクレスは
「元素を結合させるのは
のチカラだ!!
そして分離させるのが
憎しみのオーラ!!」とか言ったそうな。
かなりマヌケでウソくさいハナシですが、これは本当のことですし、
なによりエンペドクレスは
本気だったのです。
でも、そんなことを平気で言うのは「
スターウォーズ」と「北斗の拳」の中だけにして欲しいです。

 まぁ、そういうワケで「四大元素論」ってのは、
愛とか憎しみとか言ってる時点で説得力がないワケです
(もっとも、多元素によって世界が構成されていると考えたことは画期的でしたけど、
その後登場した原子論の考えがスゴすぎたのです)。

 「じゃあ、どうして四大元素ってのは
ゲームの中ではメジャーなンだ?」と疑問に思う方も多いことでしょう。
お答えします。
この四大元素は、その後アラビアのほうに伝わり、
錬金術なる化学として発達したからです。
それがヨーロッパに戻ってきて、今での地位を得たのです。


 結論:哲学では、四大元素はマイナーである。