ヤムヤム
  95.2.17  バンプレスト


 



  
【異なる物質同士が化学反応を起こし、そして有毒ガスを発生した。】

 
ヤムヤム」という作品がある。
 おそらく、誰も知らないと思われる作品である。
 知名度ゼロだと自信をもって言い切れるマイナーゲームである。

 このゲームのジャンルは、たぶん
3Dシューティングに分類されるのだと思います。
 たぶん、というのは「ヤムヤム」は、
 3Dシューティング以外に
フリーシナリオRPGという要素も兼ね備えているからです。

 
3DシューティングとフリーシナリオRPGという組み合わせ
 少しでも
危機感を覚えた方、とても賢明です
 どう考えてみても相性悪そうですね。
 いわば「
とんかつパフェ」みたいなものですか。

 ちなみに本作のキャラクターデザインを手掛けたのは
 「ドッジ弾平」「レッツ&ゴー」などでお馴染みの
 チビッコマンガの大御所
こしたてつひろ先生であり、
 そのシナリオを手掛けたのは「抜忍伝説」「ラストハルマゲドン」「BURAI」から始まり、
 スーファミでは「龍騎兵団ダンザルブ」「ソウルアンドソード」「学校であった怖い話」などで知られる
 ゲームシナリオの大御所
飯島健男氏(現在は飯島多紀哉というペンネームに改名)であります。

 
こしたてつひろ先生+飯島健男氏という組み合わせに
 少しでも危機感を覚えた方、とても賢明です。
 どう考えてみても相性悪そうですね。
 いわば「
明太子シュークリーム」みたいなものですか。

 
 ……。
 つまり「ヤムヤム」とは、
 ソフトクリームとカレーを足すことでさらなるヤバさを生み出した
 「
カレーソフトクリーム」みたいなブツだと考えていただければ幸いでございます。
 
  
(イメージ図)




  
【フラグを立てろ!そして撃て!!】

 
本作は、3Dシューティングゲームでありますが、
 敵を倒すことによってレベルが上がったりお金がもらえたりするRPG要素も持っています。
 そして各地の街を尋ね、特定の人物に話しかけることで
 イベントフラグが立ち(イベントが発生or分岐していく)、フリーシナリオが展開されます。
 で、新たな場所へと移動可能となるのですが、
 この移動中こそが本作の中心である3Dシューティングになっているワケです。

 街から街へ移動→3Dシューティング。
 街から森へ移動→3Dシューティング。
 森から森の奥へ移動→3Dシューティング。
 そこから街に帰る→3Dシューティング。
 …とまぁ、そんな流れです。
すべてにおいて、そんな流れです

 3Dシューティングして、イベントフラグを探し、3Dシューティングして、
 イベントフラグを立て、3Dシューティングして、その間にレベルが上がったり、
 3Dシューティングして、たまったお金で武器・防具を買ったりして、3Dシューティングして、
 イベントクリアを目指すのです。

 が、困ったことに
 
本作のメインである3Dシューティング部分
 
単調というか地味というか大味というか底が浅いというか、
 まぁ
本気で激しくツマラナイのです
 このツマラなさ、ある意味
拷問

 その原因は、自機の移動速度が遅く、行動範囲に制限があり、そのクセに当たり判定がデカいから。
 本作は、他の3Dシューティングゲームと比較すると
 敵編隊の出現パターンや攻撃バリエーションが単調なぶん着弾位置がわかりやすいのですけども、
 にも関わらず、敵弾に当たります。
 
敵の攻撃を見切ったつもりでも、平気で当たってしまいます
 その心境、例えるならばパジャマボタンをうまくとめられずに逆ギレする矢吹ジョー。
 ヘーイ、ジョー、ファイトファイトー。タノシーネー。
 
 
…楽しくねぇよ!!


 そんな本作の3Dシューティング(
の酷いところ)の極めつけは、中ボス戦
 なんと、
あらゆるボス敵の攻撃方法がすべて同じという
 まさに文字通り
手抜きな設計なのです
 (各ボスごとに違う部分は、弱点箇所、弾速のスピード、耐久力、
あと見た目だけ)。
 なので、すべてのボスに通ずる攻略法は
 「常に移動しながら弾を打ち続けるだけ」というシンプルすぎるものでありますし、
 前述したとおり着弾位置がわかってても弾に当たってしまうので、
 
ボス戦中にランダムで現れる回復アイテムを拾えるかどうか
 
=プレーヤーの運のよさが、
 ボスを倒せるか否かを左右する
重要な要素なのであるとも言えましょう。
 あ、言い忘れてましたが、それは中ボスだけでなく
ラスボスも同じです。

 世間では、そういうのを一般的に
クソバランスと呼びますが、
 本作の場合は、レベルを上げてHPアップさせたり、
 防具買って防御力を強化させたりすることができるという
 
力技的な(としか言いようが無い)バランス調整がなされておりますので、
 心配無用でございます。
 …もっとも、それが果たしてゲームとして面白いかどうかを問われれば、
 「
ぜんっぜん面白くないです。」と本気で即答してしまうのですけども。

 
  
静止画像だと、まっとうなシューティングゲームに見えるのが不思議。
  
  



  【すべて夢オチで解決なフリーシナリオ。】

 
本作の目的は、危機を迎えつつある地上を救うために
 地底王国の王子
マグマグが、友達のヤムヤムといっしょに
 
地上の平和を探していくことです。

 
 
しゅじんこうのマグマグ。かわいい。

 
 
ともだちのヤムヤム。かわいい。


 んで、
平和というものは人によっていろいろありまして、
 それぞれが各クエストに対応している、というワケですね
 (6つの街にいる住人に話しかけ、依頼を聞くことでクエスト開始フラグが発生する)。

 本作はフリーシナリオRPGであると前述しましたが、
 厳密に言うならば「各クエストはどんな順番でも始められる」と考えていただければオッケーです。
 そんなクエストを全部クリアすると最終クエストが登場する、という構成なのです。

 ちなみに本作は、ひとつのクエストをクリアするごとに
 「
じつは夢だった」という夢オチ展開となり、
 
再びレベル1からスタートするシステムとなっています。

 …なんかどこかで聞いたことのあるシステムに似ているような気がしますし、
 「ゲームレベルは1でもプレーヤーのレベルは上がってるヨ!」な
ポジティブ思考な方も
 なかにはいらっしゃるかもしれません。
 でも「ヤムヤム」の3Dシューティングには
 
プレーヤーの腕を反映してくれるほどのゲーム性がありません
 クリアできないステージやボス戦に出くわした場合は
 やっぱり3Dシューティングでカネと経験値を
稼ぐ作業に徹する
 
運任せで乗り切るしかないのです。


 はい、まとめ。
 「ヤムヤム」は、プレーヤーがクエスト開始フラグを立て、
 ぜんっぜん面白くない3Dシューティングをこなし、
 クエストクリアしたら、またフラグを立てて3Dシューティングをこなし…を
 
延々と繰り返すだけのゲームです。
 間違いありません。

 ついでに言っておきますと、
 一度クリアしたクエストが
何度でもプレーし直せる仕様となっておりますので、
 未クリアシナリオの発生フラグ探しをしている途中で
 
クリア済みクエストの開始フラグをうっかり発生させてしまったら
 
そいつをもう一度やらなければならないハメに陥ります
 イコールそれは、
 「いっかい見たイベント(クリア済みのクエスト開始フラグ)」をプレーヤー自身が把握してないと
 再び
くっそつまらない3Dシューティングをやらされることを意味します。

 本作のフリークエストの数は、
全部で28種もあるので
 それぞれのクエスト開始条件なんざ
把握できるはずもありません
 これが、このゲームの難易度(作業度)を
無駄に上昇させている一因であるとも言えましょう。

 いやぁ、もう本当にね、
 穴を掘っては埋め、その穴をまた掘っては埋める作業の繰り返しを強要される
 
極東の収容所にブチ込まれた工作兵の気分が味わえること請け合い。
 かーなりキッツイ拷問ゲーです。

 
 
イベントシーンはよくできていますが…。




  【チビッコどもには見えない変化球。】

 …とまぁ、「ヤムヤム」のことを可能な限り全力で
 
徹底的にボッコボコに叩きました次第でありますが、
 これは決して
誇張しているわけではありません
 すべて僕の主観に基づいた事実であります。

 
3Dシューティング本気で面白くありませんし、
 インターフェイスまわりでも未完成部分な形跡もありますしで、
 
かなり雑な仕上がりを誇る作品であるのは間違いありません。
 そのくせクリアに要するプレー時間は、そのへんのRPGに匹敵するくらい長いので
 もう
最悪の極みと言っても差しつかえないくらい酷いゲームです

 
10人中10人にオススメしません
 
100人いたら100人全員にオススメできません
 かと言って、僕らの心に笑いを提供してくれる
ク○ゲーとしての価値もありません
 「
ヤムヤム」は、それくらいどーしようもないゲームなのです。


 だけど僕は、この作品を
隠れた名作だと思っています。

 本作には、そのへんのゲームでは絶対に実現できないであろう
 
たったひとつの誇るべき点があるからです。
 それは、本作の物語テーマとなっている
 「
みんなの平和はなんだろう?」という至極シンプルな問いであります。

 「ヤムヤム」のターゲット層が、小学生のチビッコどもであることは
 キャラクターデザインから容易に想像することはできます。
 ゲーム中で発生するクエスト内容も単純でわかりやすく、複雑な展開はいっさいありません。
 全部がぜんっぶ「お使いもの」なので、
 シナリオ1本1本を単体で見れば特筆すべきことはありません。

 
しかし
 ここにこそ
本作に仕掛けられた変化球が潜んでいるのです。


 マグマグとヤムヤムの目的は、
 地上で失われつつある平和を探し出すことですが、
 マグマグとヤムヤムは
頭が悪いので平和がどんなものか知りません。
 そこで様々な地上人たちに「平和ってなに?」と尋ね、
 依頼を受ける(クエストが発生する)ハメになるのです。

 各クエストは、それぞれが1コの平和と繋がっているのですが、
 ゲームを進めて行くにつれ、
依頼主にとっての平和とは
 たいていの場合、
ただのエゴだということがわかってきます。

 なかでもエスプリ炸裂しまくりなのが、
 「
世界の平和を望む宗教団体」からの依頼。
 「ヤムヤム」の世界には、そんな宗教団体がよりによって
3つも存在しており、
 それぞれの団体からの依頼は「
他の宗教は悪だから滅ぼしてくれ」という
 ミもフタもない要求だったりします。

 
 
「ヤムヤム」の世界に登場する宗教「ドッコイ教」「マタコイ教」「ヨサコイ教」は、名前のいい加減さの通り、どれも同じに見えます。御神体の見た目も同じです。


 本作で通して描かれてる平和とは、利己的な欲求の集合体であります。
 たとえ誰かの幸せを犠牲にしても、
 依頼者が望むものならば、それが平和でありクエスト達成の目的なのです。


 さて問題。
 「すべての人々が望む幸せを満たそうとした場合、
  道徳的規範に則った者が苦痛を伴わなくて済むか否か?」

 そんな哲学的な平和論に対するひとつの解答が
 本作では「夢オチ」「フリーシナリオ」という
ゲームでしか表現できない形で
 
遠まわしに表現されているのです。


 多くのRPGは、ラスボスが死んでくれることによって
 世界が平和になってくれます。
 主人公にとって対立する存在や障壁を
 暴力的手段でのみ排除するだけで、世界にハッピーがやってくるものです。

 一方、「ヤムヤム」で描かれる「最大公約数的な平和像」は
 クエストを重ねることによって
 「地上はべつにたいした危機を迎えていない」ことが断片的に語られていきます

 いちおう「ヤムヤム」でもラスボスを倒すことでエンディングとなりますが、
 肝心のそのラスボスが、
通常のRPGとは全く異なる存在なのも
 
かなりシャレが利いてて(変な意味で)インパクトあります。

 その果てに、マグマグとヤムヤムが見つける平和が
 意外とアッサリしたものだと結論づけられてるのも、
 なかなか皮肉タップリで素敵です。

 そうなのです。
 「ヤムヤム」の価値は、
 「王道的RPGシナリオが描く一元的な平和像に対する
徹底的なアンチテーゼ」なのです。



 本作の
ゲームそのものはくっそ面白くないです
 しかし、既存のRPGシナリオに飽きてしまったと呟く末期的な偏屈野郎には
 期待しないで触れてみて欲しいと思う
奇作中の奇作であります。
 1000人に1人くらいになら、オススメできるかもしれません。

 最後に。
 念を押しておきますが、「ヤムヤム」というゲームは
 
超危険物です。
 はっきり言って、時間の無駄なので
 無理してプレーする価値はありません。







 〜おまけ〜
 このゲームをプレーするために必須のイベントフラグ一覧。

 ・ミルクはイヌだよ:クランベリー(カトリーヌ)
 ・おとうさんさがし:ミントキャンディー(メイプル)→ストロベリーパイ(マイク※500G払う)
 ・しんじゅはどこだ:サワークリーム(メロディ)→ストロベリーパイ(マイク)
 ・プリプリたいじ1:バニラアイス(ボーバン)→プリプリ太郎を許さない
 ・プリプリたいじ2:バニラアイス(ボーバン)→プリプリ太郎を許す→クランベリー(ミリアン)
 ・プリプリたいじ3:バニラアイス(ボーバン)→プリプリ太郎を許す→ストロベリーパイ(フローレンス※所持金全額払う)
 ・プリプリたいじ4:バニラアイス(ボーバン)→プリプリ太郎を許す→バニラアイス(コロレッツ)
 ・ジャジャンゴだぞ:チョコチップ(ジョン)
 ・はたけをまもろう:バニラアイス(コロレッツ)
 ・マタコイきょう:サワークリーム(デップル)→ストロベリーパイ(マイク※1000G必要)
          →ストロベリーパイ(ベルモント)→バニラアイス(コロレッツ)→ミントキャンディー(メイプル)
 ・ドッコイきょう:バニラアイス(ベラ)
 ・ヨサコイきょう:ストロベリーパイ(フローレンス)
 ・さばくのせんにん:クランベリー(ミリアン)
 ・ゴミをひろおう:サワークリーム(エリオ)
 ・ゴミはくさいよ:チョコチップ(ウィルソン)
 ・へいわをかおう:ストロベリーパイ(マイク)
 ・パゴパゴたいじ:クランベリー(リンダ)
 ・オトドトンたいじ:ストロベリーパイ(ベルモント)
 ・うみよわらって1:チョコチップ(ラディック)→ナデシココを助けない
 ・うみよわらって2:チョコチップ(ラディック)→ナデシココを助ける
          →バニラアイス(ボーバン)→ミントキャンディー(サベージ)
 ・パッパラリア1:ノーテンコ城→クランベリー(カトリーヌ)
 ・パッパラリア2:ノーテンコ城→ストロベリーパイ(ベルモント)
 ・パッパラリア3:ノーテンコ城→クランベリー(リンダ)
 ・パッパラリア4:ノーテンコ城→サワークリーム(メロディ)
 ・パッパラリア5:ノーテンコ城→クランベリー(クランベリー)
 ・ゴミをすてましょ:ミントキャンディ(サベージ)
 ・ペットモンスター:チョコチップ(ゴンタロー)
 ・まちをきれいに:ミントキャンディ(ロビンソン)
 ・ちていがあぶない:全シナリオをクリアすると自動的に発生








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