迦楼羅王
  94.2.18  エピックソニーレコード


 



  
【スーパーファミコン版「HOOK(フック)」の続編?】

 海外の映画作品とタイアップ(柳の下のドジョウを狙い撃ち)しているゲームは
 ファミコン時代からございます。
 その大半は、当然のことながら
 
本場アメリカ〜ンな作品すなはちアメゲーで構成されております。

 
例外、つまり洋画タイトルのゲーム化を日本のメーカーが手掛けた例を挙げるなら、
 ファミコン作品では「グーニーズ」「キングゴング2」「トップガン」「スターウォーズ」
 「ロボコップ」「ウィロー」「バットマン」などが有名でございますね。
 
 でも、スーファミ作品となれば、
洋画ゲー・メイド・イン・ジャパン作品
 僕の知る限り、
たったの2本しかありません(他にあったらごめんなさい)。
 「バットマンリターンズ」と「
HOOK(フック)」である。

 「バットマンリターンズ」は、コナミが製作したベルトフロア型アクションゲームで、
 映画作品を見事にゲーム化した暴力ゲームの名作であります。
 しかし、一方「
HOOK」の方はどうかと言いますと
 和製ゲームではありますが、まぁまぁ
アレな内容のため、
 映画作品の知名度とは真逆に、ジャパンのユーザーからは
ぜんっぜん相手にされませんでした

 正直なところ、僕も
「HOOK」を名作だとは思っておりません(映画は観てません)。
 
無駄に慣性がかかったモッサリとした操作感とか
 
ミョーにシビアな当たり判定が奏でる難易度は理不尽なまでに凶悪で、
 いわゆる
ク○ゲーの類に分類されても仕方がないブツだと言い切れます。断言できます。

 そんなファックな出来の「HOOK」でございますが、
 決してどーしょーもないク○ゲーという訳ではなく、
見るべきところも存在します。 
 それは、
やたらとステージ構成が凝っているトコです。
 爽快感のカケラもないテンポの悪さや
 絶妙に不自然な当たり判定にガマンすれば(
できれば)、
 そのへんの当たり障りのない平凡でどーでもいいアクションゲームよりもしっかりした内容の
 
「惜しい」ゲームだったのです。

 「…
そンなら全部直したるわ!」と開発者の方々が思ったかどうかは知りませんが、
 「HOOK」を開発したソフトハウス「
浮世亭」は、
 「HOOK」の問題点を徹底的に洗い出し、改善し、
 ついでに
ヤケクソとも言わんばかりのネタをブチ込みまくり
 その果てに大幅にパワーアップを遂げた
完全オリジナルのゲームを世に送り出したのである。
 「
迦楼羅王」がそれである。




  
【タイトル読めません】


 本作は「
カルラオウ」と読みます。
 そして、「カルラオウ」は
「HOOK」の続編ともいえるアクションゲームなのでありますが、
 もちろん、映画の「HOOK」の続きというワケではありません。
 和製アクションゲーム「HOOK」を開発したスタッフが、
 その流れを踏襲し、かつ大幅にパワーアップさせた作品、という意味での「続編」なのです。
 当然のことながら、「カルラオウ」という映画がある訳でもありません。
 ややこしくてごめんなさい。

 「カルラ」とは仏教における神様の名であり、
 インド神話における神鳥:ガルーダを由来とするそうです。
 つまり、本作は
インド神話をモチーフとした
 
絶妙なまでに微妙な香りがプンプンするアクションゲームなのです。

 ストーリーを紹介しますと、こんな感じ。

  アシュラ(
わるいやつ)は、魔族王ラバーナ(もっとわるいやつ)を復活させるために
  ビシュヌ(
おひめさま)を生贄にしようと考えました。
  迦楼羅(
しゅじんこう)はブラフマ(なぞのろうじん)に助けてもらい、旅に出ました。 

 …以上ッ!
 アクションゲームなので、とても
わかりやすいストーリーですね。
 多少気になることは、登場人物がインド神話に出てくる神様の名前だということですが、
 本作はインド神話をモチーフにした世界が舞台のアクションゲームという
だけであって、
 
深く考える必要はまったくありません
 シューティングゲームのストーリーと同じくらい
無視してもらってオッケーでございます。
 これで夜も安心。

 本作は「スーパーマリオ」型の
 
昔からよくあるタイプの横スクロールなジャンプアクションゲームであります。
 溶岩から火の玉が噴き出す、滑る氷の床、床と天井に針山、
 挟まれたら即死の動く壁、連続リフト地帯、乗ったら落ちる足場、消える足場、
 水の中でも酸欠にならない、コインを100個集めると1UPなどの
 
なんともマリオな仕掛けが満載の本当によくあるアクションゲームであります。

 「スーパーマリオ」型のアクションゲーム、
 あるいはその模倣、二番煎じやら劣化版の類は数多く存在します。
 「カルラオウ」もまた、そのマイナー具合からしてみれば、
 よくある横スクロールのジャンプアクションのひとつに過ぎません。

 だが、「カルラオウ」をプレーした者ならば
 本作に対してこのような評価をしているはずである!
 「
横スクロール型アクションゲームの集大成」と!!




  【なにかにつけて気合の入った雄叫びをあげますが気にしてはいけません】

 
「カルラオウ」の操作は、
 Bボタンでジャンプ、Yボタンで攻撃、Xボタンで必殺技(あとLRボタンで使用必殺技の選択)と
 非常におなじみのシステムである。
 他には、攻撃ボタン連打でパンチ→パンチ→キックのコンビネーションが発生したり、
 壁に張り付いたり、よじのぼったりできる、くらいの
 これまたおなじみのアクションである。

 そのへんのアクションゲームとちょっぴり違うことを挙げるとするならば、
 ジャンプするたびに「
トゥッ!」とやけに気合の入った掛け声を発し、
 攻撃するたびに「
ハッ!ハッ!タァッ!」とやけに気合の入った掛け声を発し、
 ダメージをくらうたびに「
ぬわっ!」とやけに気合の入った掛け声を発し、
 死亡した際には「
うーわうーわうーわうーわ(残響音含む)」と
 
やけに気合の入った断末魔の雄叫びをあげることですか。
 あ、死亡時の残響音はありきたりですね。

 ということで、最初のステージを
敢えて泥酔状態でプレーし、
 それを音声のみで再現してみようと試みた結果、こんな感じになりました。

 (♪ズンドコドゴンゴ♪ズンドコドゴンゴ♪  ※ステージ1のBGM)
 
トゥッ!トゥッ!
 
ぬわっ!タァッ!
 
ハッ!ぬわっ!ハッ!トゥ!ぬわっ!
 
トゥッ!ハッ!トゥ!
 
ハッ!ハッ!トゥ!ハッ!
 
ハッ!ハッ!タァッ!
 
トゥ!トゥ!ぬわっ!
 
ハッ!ハッ!うーわうーわうーわうーわ(残響音含む)

 …泥酔状態でのプレーの為、最初のステージで普通に死亡してしまいましたが(本当)、
 「カルラオウ」は
そんなに難しいゲームではありません
 その難易度は、ヌルすぎず極悪すぎず。
 まさに
絶妙の難易度なのです。

 その絶妙っぷりが炸裂しているのが、
 序盤の難所、5つめのステージこと「
空の灯台」。
 このステージの構成、求められるジャンプアクションの難しさと救済措置、
 そしてステージ最後に待ち構えるボスとの
死闘(※本当に死にまくる)は
 このゲームの
代名詞と言っても過言ではないくらい凝りまくってて濃いです。
 そしてボス戦のトリックを見破って撃破できた頃には、
 このゲームに対して
ベタ惚れ状態になってしまってることを保証いたします




  【アンタはギミックの総合商社や!!】

 
「カルラオウ」の魅力。
 それを一言で表現するならば
 まさに「
ネタのカタマリ」が相応しいでしょう。

 全17ステージから成る本作ですが、
 
ひとつひとつのステージは短めになっているものの、
 各ステージの構成はそれぞれ
ハッキリと個性付けされています。
 で、その個性というやつが
ハッキリしすぎていて
 いわば
1ステージ1ギミックな仕上がりとなっております。
 演出が派手な
だけの最初のステージからはじまり、
 森の中でピョンピョンしながら戦う
ステージに、空中戦のステージ、
 溶岩ステージに塔を上っていくステージに
 氷でツルツル滑るステージに水中でプクプク言わすステージ…などなど
 陳腐な言い方をすれば「プレーヤーを飽きさせない仕掛けが満載」と言ったところですが、
 別の言い方をすれば「
各ステージが一発芸」な
 
まるで忘年会の一場面を思わせるような素敵すぎる仕上がりとなっております。

 そんな一発芸が
さらに炸裂しているのが、
 
製作者の執念が生み出したボス戦の数々。
 全9体のボスキャラのほとんどが
一発芸の持ち主で、
 
最高にイカス攻撃方法で襲い掛かってきます。
 約2名ほど地味〜な奴がいるのはご愛嬌ですが、
 残り7人のボスキャラ…いや
芸人たちは
 
それぞれのネタでプレーヤーをブッ殺してくれることでしょう

 時には、その強さに圧倒されそうになるかもしれませんが、
 しょせんは
やはり一発芸
 そいつの
芸風=攻撃パターンさえ見極めてしまえば、難なく倒せてしまうという
 
非常に笑えるバランスのアツイバトルが目白押しでございます。

 次から次へとプレーヤーにたたみかける
 インド人もビックリな怒涛の如くの展開は
 たとえるならば「
ギミックの総合商社」!
 
マイナー作品ではございますが、
 スーファミアクションゲームの
超穴馬として激烈にオススメしたいくらいの良作です。

 発売してる会社が会社だけに、現行機にリメイク移植される可能性は絶望的。
 一般的に知られることなく消えてしまう存在であることが
確実なのは悲しいですが、
 それでもなお、埋もらせてしまうのには惜しすぎる作品であります。

 
ホントにコレ、よく出来てますよ。やれ。







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