ゼロヨンチャンプRR
  94.7.22  メディアリング


 



  
【比類なきレースゲーム シリーズ第3弾】

 「もし、
無人島に1本だけゲームを持っていくとするならどのゲームを選ぶか?」
 こういう選択を迫られたとき、
 僕はさんざん悩んで数々の候補をピックアップした挙句、
 最終的に「
ゼロヨンチャンプRR」(「だぶるあーる」と読む)を選ぶことだと思います。


 ゼロヨンとは、
約1/4マイル=400m直線
 いかに
速く走るかを競うレースである。
 そして本作「ゼロヨンチャンプRR」は、そんなモータースポーツをゲーム化した
 
唯一無比なシリーズ第3弾にあたる作品であります
 (1作目、2作目はPCエンジンで発売されました)。

 このゲームの目的は、
 
直線だけのレースをこなし、
 
マシンをチューンして、
 タイマンの
レースに勝って
 
チャンプになる。         …以上

 ゲームの目的は、ホントのホントに
これだけであります。
 レースゲームつっても、本当に
直線をまっすぐ走るだけですから、
 コーナーがなければハンドリングやブレーキも一切必要ナシ。
 走る距離もたったの
400mですから、1レースが10秒程度で終わるという内容。
 そのへんのレースゲームの感覚で考えたら、
 
アクセルとギアチェンジくらいしか使わないのじゃないかと思わせるほどの
 (実際にアクセルとギアチェンジしか使いませんが)、
スーパーに単純なレースゲームでございます。




  
【オマエはゼロヨンの奥深さを何もわかっちゃいねぇ。】


 「短距離直線を走るだけのレースの何がオモロイの?」と感じる御仁も多いと思います。
 はい、それだけのゲームが
オモロイはずもございません
 しかし本作では、
そのへんのレースゲームにはない要素が重要なカギを握っていて、
 それがゲームシステムの中核を成しているのであります。
 その要素は、
クラッチであるッ!

 レースゲームの歴史において、
 リアルさを追及することは、クルマの挙動やらなんとかにエネルギーが注がれてきたッ!
 でも、僕たち一般人にとってのクルマのリアルさってのは、
 乗ったこともないクルマのエンジン音やら足まわりとか、
 体感したこともない速度領域などなど、
そんなものではないはずじゃありませんか?
 思い出してみてください。
 
自動車教習所に通ってエンストしまくったことをッ!
 
エンジンを空回りさせてた悪夢をッ!
 ギアチェンジの度に
ガッコンガッコンいわせてた日々をッ!
 クソ教官に
ネチネチ言われまくってた屈辱をッ!!
 なぬッ、MT教習は受けていないだとッ!?
 そんな奴はMT教習を受けに行って来いッ!
 そして教官から発射させる嫌味を
トラウマとして心に刻み込むのだッ!

 …話を元に戻すと、クルマを走らせることの
リアルさ(或いはその現実そのもの)は、
 
クラッチ→ギアチェンジの難しさに集約されるのではないかと僕は思い込んでいます。 
 僕らにとって、クルマを運転する難しさ、
 同時に運転することの楽しさの
原点
 クラッチ→ギアチェンジという
他愛のない行為にあったと思うのです。
 そんな行為とは切っても切り離せない
過去のトラウマが、
 本作ではクラッチ→ギアチェンジという形で
 
見事に表現されているのであります。

 クラッチが存在するレースゲームは、本シリーズを除いて
 ゲーセン版「リッジレーサー」しか知らない僕ですが(他にあったらごめんなさい)、
 レースゲームにおいてクラッチが採用されない理由はいろいろあると思います。
 「ゲーム」という視点で見てみると、その最大の理由として
 操作体系が複雑化することが、敷居を高くしてしまうということが挙げられるのではないでしょうか?
 しかし「ゼロヨンチャンプ」は、
まっすぐ走るだけのレースゲームです。
 つまり、ハンドル操作しない=十字キーをハンドリングに使う必要がないぶん、
 通常のレースゲームでは
 邪魔者扱いされてる
クラッチを介したギアチェンジに重点が置かれているのです。

 ここで、
ギアチェンジと十字キーの関係についてピンと来た方、
 ナイスです。ナイスですよ。
 本作がそんじょそこらのレースゲームと決定的に違うのは、
 十字キーがハンドル操作の役目をするものではなく、
 
シフトレバーとしての役目を果たしているということなのであります!

 本作におけるギアチェンジの操作を紹介いたしますと、
 
1速から2速にシフトアップするときは、
 アクセルボタン離す→クラッチボタン押しっぱなしにする→十字キーを
↓・↓と入力
 →クラッチボタン離す→アクセルボタン押す という操作になります。
 で
、2速から3速の場合なら、
 アクセル離す→クラッチ押す→十字キーを
↑・→・↑入力
 →クラッチ離す→アクセル踏む という具合。
 まさに十字キーをシフトレバーに見立てているワケです。

 わずか400mという直線距離を駆け抜けるのは、
 言葉にしても「単調」の一言でカタがついてしまいますし、
 レース中、対戦相手との駆け引きなんてものは当然ありません。
 勝敗の基準は
相手より先にゴールすること。
 本作におけるレースには、
などといった不確定要素などございませんから、
 
一瞬の操作ミスが勝敗を左右することはザラ
 レース毎回が
真剣ガチンコ勝負なのです。
 勝つために必要なものは、クルマの性能とジブンの腕だけのシビアな世界。
 だからこそ、このゲームで重要になってくるのが
 アクセル→クラッチ→ギアチェンジ→アクセルという手順を
 
いかに素早く効率良く、かつ正確に行えるかであり、
 まるで
格闘ゲームを思わせるようなキー入力を要求されるシステムに仕上がっているのです。
 「ゼロヨンチャンプ」とは、そんなゲームなのです。

 スタートランプの点灯と同時に飛び出せるかッ?
 スタートしたときのエンジン回転数はベストかッ?
 ギアをチェンジしたときのホイルスピンは少なくできてるかッ?
 1レースがたったの10秒程度ですから、
 トップスピードに達するまでにレースが終了してしまうことなど当たり前。
 ネタバレですが、ゲーム終盤には
2速発進するなどという荒業も要求されたりもしますわよ
 (この荒業が有効だということがゲーム中では一切語られないことですけども、
 そのことがゲームバランスに一層
華を添えています)。




  【閑話休題】

 あまり知られていない(と思う)ことだが、
 
レースゲームとジョイスティックの相性意外と良い
 ジョイスティックを地ベタに置き、アクセルボタンを
足の親指で踏むのです。
 すると、あららビックリ。これが意外にも
けっこう燃えるのであります。
 特に、ハンドルのカウンターを当てることが求められるドリフト系のレースゲームの場合だと尚更、
 スカスカな操作感のレーシングコントローラーなんかより
 よっぽどイイ感じが満喫できるのです。

 で、本作「ゼロヨンチャンプ」においても、同様に
その方法が通用します。
 その理由については、皆様もうおわかりだと思います。
 はい、
ジョイスティックをシフトのレバーと思い込むのであります。
 アクセルとクラッチを足(の親指)で押し、シフトチェンジを左手で行う…。
 その感覚、
ある意味リアル
 レバーを右手で持てば、
左ハンドルな気分も味わえるので、とってもおトクさ!

 ウラ技的テクニックではありますが、
 2速→3速間or4速→5速間でのレバー操作(
↑・→・↑)は、キーをナナメ入力することで
 シフトチェンジ間のタイムロスを
コンマ00秒単位で短縮できたり、
 その反面、操作が暴発しやすいとい
う無駄なスリル必要以上に味わえるので、
 僕は本作を
ジョイスティックでのプレー本気で推奨します
 キタナイって言うんじゃない!アツイって言うんだ!




  【最高のコストパフォーマンスを誇る理由】

 このゲームにおいて、マシンのチューンに必要な資金は
 基本的に
2つの方法でゲットすることができます。

 1つは「レースに勝つ」こと。
 レース大会で上位入賞することで賞金が貰える他、
 また草レース(≒
賭博レース)に勝つことで
 対戦相手からカネを巻き上げる、もといゲットできるワケですね(ツッコんではいけません)。
 ゲーム中では一切語られませんが、本作の舞台は横浜(※)ですので
 そのかっぱぎシステムは「レーシングラグーン」な感じだと思っていただければ問題ありません
 (※元町という地名だけが登場するが、MAPの構成は明らかに横浜市がモデルになっている)。

 そして肝心なのは、2つめの方法。
 それは
アルバイトである。
 「ゼロヨンチャンプ」シリーズには、
 初代からカネをゲットする一手段としてアルバイトという名目のミニゲームが存在していました。
 このミニゲーム、
あくまでオマケでありますが、
 このオマケ部分がユーザーから好評を得てしまい、
 シリーズを重ねる度に無駄にパワーアップしていったのであります。
 で、このミニゲーム部が
 とうとう
本編を食ってしまうくらい肥大化してしまったのが
 3作目にあたる本作なのであります。

 「ゼロヨンチャンプRR」は、レースゲームである。
 直線だけのレースをこなし、
 マシンをチューンして、
 タイマンのレースに勝って、
 チャンプになる。  …そんなゲームである。


 しかし、シリーズを追うごとに強化されていったミニゲームに費やす時間が
 本作ではついに、本編のプレー時間を上まわるなどという
 
逆転現象を引き起こしてしまったッ!
 ある意味、本作のメインとも言っても過言ではないアルバイト
 「
オフィスビルの警備」がそうであるッ!!

 この警備員アルバイト、要するに
RPGであります。
 3人パーティでビルの最上階を目指して、ひたすら攻略していくのですが、
 笑えることにコレがなかなかのデキでございまして、
 「
不思議のダンジョン」と「ウィザードリィ」を足して2で割ったような感じ。
 このオマケRPG、シナリオやイベントが皆無で
 純粋にフロア攻略していくというだけというシンプルな構成ですが、
 
ヤケクソにレベルが上がりまくるという
 
ブッ壊れたゲームバランスが快感で(ただし、ゲームバランスが良い訳ではない)、
 コレが意外にも、本編そっちのけでハマってしまうのです。
 で、このアルバイトに精を出しているうちに
 気がつけば本編では全然苦労しないくらいのカネがたまっている…というワケです。

 他のミニゲームでは、なぜか
麻雀があったり、
 カネとは直接関係ないミニゲームとして、
 詰め将棋的なパズルゲーム「
ゴキブリパニック」、
 対戦プレーが死ぬほどアツイ殺し合いゲーム「
戦車対戦」などがございます。
 そして、それらのミニゲームのどれもが
凄まじく完成度が高いのです。
 かと言って、本編のデキがどうかと言うと、
 レースゲームとしても素晴らしく、またアドベンチャーパートの物語展開も
 しっかり面白いのが本作のスゴイところ。
 僕が「無人島に持って行くゲーム」として「ゼロヨンチャンプRR」を挙げる理由は、
 この作品が
最高のコストパフォーマンスを誇るからに他なりません。

 同じくスーファミで発売された続編こと
4作目RR-Z」(「だぶるあーる、ずぃー」と読む)では
 ミニゲームがさらにパワーアップします。
 キャラクターメイキング、転職まで可能なシステムを搭載した
魔物退治のアルバイト
 (本編クリア後に主人公は魔界に旅立ち、本編とは完全に独立したシナリオが展開する)に、
 ギャンブルでは、麻雀だけでなく
パチンコ(全3機種)も追加。
 アルバイト先のゲーセンでは
パズルゲーム3Dシューティングゲームあり、
 探偵アルバイトではミョーに推理力を求められる
スゴロク風ゲームがプレーできます。
 おまけに本編のゲームそのものとは別に、
 
サウンドノベル風のゲームモードも用意されてる始末。
 本編クリア後には、麻雀の対戦相手「源さん」を主人公にした
 
ギャンブルのみでカネを稼いでいくゲームなんてのも出現します
 (このギャンブルモードでのみ登場する「賭けレース」は、ある意味必見)。

 …しかし、個人的感想では
 ミニゲームの1本1本のデキは3作目「RR」の方が完成度が高く、
 4作目でのミニゲーム群は「本数は増えたけど、あんまり面白くない」と
 全体的なパワーダウン感が否めないのが残念なところ。
 でも、困ったことに
本編部分4作目の方がオモロイので、
 総合的なデキでは一長一短といったところでしょうか。

 …。
 ……。
 …無人島に持って行くゲーム、やっぱ2本にしてもいいですか?




 余談:「ゼロヨンチャンプ」はプレステ・サターンで5作目が発売されました(僕自身は未プレー)。
  この5作目、当時の流れに乗って
  なんと「恋愛シミュレーションゲーム」化したそうですけども、
  これまでのファンから総スカンを食らい、なんとも醜い形でシリーズ終焉を迎えましたとさ。
  合掌。





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