ロックンロールレーシング
RCG  94.1.3  ナムコ


 



  「ロックンロールレーシング」は、
 スーファミ全盛期の94年のお正月に
ナムコから発売されたレースゲームである。
 ナムコのレースゲームといえば、まずは「リッジレーサー」シリーズがお馴染みで、
 古いセンでしたら「ファイナルラップ」や「ファミリーサーキット」が有名でございます。
 しかし、ナムコから「ロックンロールレーシング」というレースゲームが
 発売されていたということを知る者は、かなり少ない。
 
マイナーだからです

  ナムコという大御所からスーファミ全盛期に発売され、
 なおかつCMまで流されていた(らしい)にも関わらず、本作が超マイナーな理由。
 それは「ロックンロールレーシング」が
アメゲーだからである。
 単純な理由でございます。
 
海外製のソフトをナムコが発売していた
 ただそれだけの話なのです。

  しかし、本作の存在を知る者は、
 「なぜわざわざナムコが、なぜこんなゲームを発売したのか?」という疑問を
 今でも持ち続けていることだと思います。
 それほどまでに、この「ロックンロールレーシング」は、
 あまりにも
強烈なインパクトを誇るアメゲーなのです。


  このアメゲーは、レースに勝って賞金を稼いでクルマをパワーアップさせていくという、
 ごくごく
ありきたりな内容であります。
 ありきたり。
 僕らのそんな考えを、このゲームは
電源を入れた瞬間にブッ飛ばしてくれます。
 と同時に、このゲームが
すさまじくイカレているかを思い知らされることになります。

  タイトル画面のグラフィックでは、
 明らかに
アメリカーン濃ゆい異生物が数体、
 なぜか雄叫びをあげてるわ、
 スターウォーズに出てきそうな緑の宇宙人様が、骨(
ドラムスティック)を持ってるわ、
 
斧型のエレキをもっているウォーズマンのバッタモンみたいな奴がおりますわ、
 
背後ではなぜか目玉のついたクルマと戦車がビィームを出していますわで、
 ファーストインパクトはかなり大です。
 
もちろん嫌な方向で

  そして画面上から落ちてくる「ROCKNROLL RACING」というクソでかいロゴ。
 これだけでもう、アメゲー臭がプンプン
でございますが、
 さらにアメリカ人のセンスが爆発しているのが、最初に選べる難易度設定の名称。
 フツーなら、「EASY」「NORMAL」「EXPERT」ってなところですが、
 このゲームの場合は
 「
ROOKIE(ルーキー)」
 「
VETERAN(ベテラン)」
 「
WARRIOR(ウォーリァー)」となっております。
 よくわからんのか、逆にわかりやすいのかすら
既にもうどうでもいいです
 電源を入れてから
わずか数秒間でもうお腹いっぱいDEATH。


  スタートすると、最初にキャラクターを選択する画面になるのですが、
 
どのキャラクターも選びたくないほど、
 
顔が濃い奴らが主人公でございます。
 金髪でアンニュイな表情をした
マッチョマン
 
できそこないのバットマンみたいなお方。
 おそらくビーバーだと思われる、
文字どおりの野生系キャラ。
 モヒカンのくせに髪の先端が
チョロ毛になっているという、ポリシーがあるのかないのかわからん奴。
 なぜか
エルフ耳をしたひと(男でジェロニモ系
 そして、
猫キャラ超リアル系)。
 
どれを選べというのですか?

  ・・・とりあえずてきとーに選び(
※この言葉に偽りはない)、
 その後クルマを購入してレーススタート!
 やけに気合の入ったなアナウンスがプレーヤーに高揚感を与えてくれます!
 もっとも、テンション高すぎて
何を言っているのか理解できませんが


  さておき、この「ロックンロールレーシング」が
 フツーのレースゲームと違うところは、
 なんと
斜め見下ろし型のレースゲームだということです。
 十字キーの左右でステアリングを行うので
 慣れないうちは操作に戸惑うかもしれませんが、
 ダイレクトにクルマの動きがわかり、まるでラジコンを操作しているような感覚がイイ感じであります。
 さらにこのゲーム、クルマの慣性がけっこうあるので、ドリフト操作がかなりアツイです
 (
ドリフトの爽快感は「リッジレーサー」よりも上だ!)。
 だがしかし、このゲームが他のレースゲームと最も違う部分は、
 その
基本的なゲームシステムであります。

  フツーのレースなら、ボタンの主な役割は、
 アクセル、ブレーキ、ギアチェンジという感じで割り振られていると思いますが、
 「ロックンロールレーシング」の場合はどうかといいますと、

 Xボタン→
なぜかジャンプ
 Yボタン→
なぜかレーザー
 Aボタン→
なぜか地雷
 Bボタン→そんでもってアクセル

 ・・・という仕様になっております。
 
このゲームにはブレーキがねぇのかよ
 いや、よく考えると
ギアチェンジも存在しません
 ちなみに
ラップタイムの表示もありませんし、
 
クルマの速度を示すメーターもありません
 そう、普通のレースゲームにあたり前に存在するものが、
 
このゲームには存在しないのです
 かわりに存在するのが、

 
ジャンプ→後にターボにパワーアップするぜイェーイ
 
レーザー→後にミサイル、追尾ボムになるぜロケンロー
 
地雷→後に拡散型地雷になるぜシェケナベーベナウ

 ・・・と
破壊的なものばかり。


  そう、「ロックンロールレーシング」が
 そのへんのレースゲームとの最大の相違は、
 
敵車を破壊できるという点なのでございます。
 本来、レースというものは「相手より先にゴールすれば勝ち」というルールが存在しますが、
 本作の場合には、さらに「
たとえどんな手段を使ってでも」という
 非常にワイルドでプリミティブでジャンキーで、
 そんでもってクラッシャーなルールが追加されております。

  したがって、せっかく1位をキープしてても
 背後から狙い撃ちされて破壊される、
 いくら2位以下をブッちぎりで離して独走状態でも知らん間にセットされた地雷を踏んでしまう、などの
 レース中のアクシデントは
あたりまえ
 他にもコース上には、踏むとステアリングが狂うマキビシ(にしか見えません)、
 踏むとスピンするでっかいマキビシ(にしか見えません)、
 スリップしてしまう水たまり、スピードダウンする雪山、
 コースアウトする可能性大のジャンプ台など、
 
悪意のカタマリとしか言いようがないトラップが満載でございまして、
 あくまで
それを前提としたゲームバランスに仕上がっております。
 トラップに引っかかったり、クラッシュしてしまった場合、
 一定時間のタイムロスとなる→逆転されてしまうというワケですが、
 それら極悪トラップの餌食になるのは
敵車も同じことなので心配無用でございます
 (回避するのが不可能なくらい、絶妙な位置にトラップが仕掛けられている)。
 
  ゲーセンのレースゲームで対戦する場合、
 後続車のほうがスピードアップすることで、対戦ゲームとしてのバランス調整がおりますけども、
 本作の場合は、これまたフツーのレースゲームにはないゲームバランスを実現しております。
 それは
トップの奴ほど破壊のターゲットにされることで、
 抜きつ抜かれつの激しいバトル(
=泥試合)が常に繰り広げられる点。
 ある意味、職人技ともいえるゲームバランスでございますが、
 このシステムを考案した人は、かなりの
バカに違いありません。

  よって、
ラップタイムなど完全に無意味
 走行テクニックよりも
破壊テクニックの方を磨いたほうが
 
勝利への近道でもありますし、
 クルマのスピードや足回りをチューンするよりも、
 
武器のパワーアップや耐久力アップに
 カネをつぎ込んだほうがレースに勝ちやすくなります



  ・・・こんなゲームでございますから、
 
ゴール前で敵に破壊されることなど常識
 逆に言えば、ゴール直前で敵の背後にピッタリ張り付き、
 ミサイルをブチ込みまくる→破壊→そして
勝利のカタルシスを得ることも常識
 ゴール直前で破壊された日にゃ、本気でブチキレてコントローラーを叩きつけそうになりますが、
 それを自分がやった場合は、
サイコーのエクスタシーを味わえることを約束します。
 「快感と苦痛は紙一重」などといいますが(誰が?)、
 「ロックンロールレーシング」はそんなサド公爵とマゾッホの欲望を
 見事なまでに表現しきった稀有(
バカ)な作品なのでございます。

  こんなに
バカなゲームでございますから、
 フツーのレースゲームにはない(
ありえない)戦略性もございます。
 まずスゴイのが、
ロケットスタートすることが圧倒的不利になるということ。
 本来ロケットスタートは、初速度からトップスピードに持っていくための手段でございますが、
 「ロックンロールレーシング」においてスタート直後にトップに立つことは、
 レース直後の混戦状態の中で抜き出る
 →
すべての後続車から狙い撃ちされるリスクを背負うこと意味します。
 したがって、レース開始直後はわざとスタートを遅らせて、
 ライバル車どもがミサイルを打ちまくって疲弊したのを
 
ここぞとばかりに狙い撃ちする「漁夫の利」作戦が、
 このゲームをプレーするにあたっての
基本ですらあります。

  いや、まぁ正確に言うと、
 「わざと遅れてスタートする作戦」はあくまで基本にすぎないので、
 ある程度の操作テクニックがあれば、そりゃロケットスタートして
 後続車からの攻撃を振り切って「逃げ」ることもできなくはありません。
 だけど、このゲームをプレーするにあたっては
 そんな
セコイ走り方をしても面白くない=このゲームをする意味がないのでございます。
 真面目に走りたいのなら、そのへんのレースゲームでもしてろ!
 「ロックンロールレーシング」は
破壊してナンボのゲームなんだよ、ファッキン!!

  このゲームは、レースに勝利することで
 マシンを強化(凶悪化)していくための賞金が得られるのですが、
 その賞金額は序盤から1万G、7000G、4000Gと
固定されているにも関わらず、
 パワーアップしていくごとにパーツ価格は上昇していくため、ゲーム中は常に資金不足に悩まされます。
 ところがどっこい、これを解決する方法があります。
 
敵車を破壊してボーナスを手に入れていけばいい。オーライ。
 したがってプレーヤーは、ゲームを進めれば進めるほどに
 
破壊を求められていくようになるのです。

  敵を見つけたらミサイル連打でアタックだ!
 敵が追いついてきたら地雷連打でクラッシュだ!
 んでもって敵が攻撃してきそうになったらターボを使ってランナウェイ!
  こんな(
バカ)ことは、フツーのレースゲームではまず味わえませんわよ!
 そんなプレーヤーを必要以上に盛り上げるのが、ゲーム中に流れるBGM。
 映画「イージーライダー」のテーマ曲である
ステッペンウルフのアレや、
 誰もが知ってる
ディープパープルのアレが流れるのであります!
 そんなBGMを聞きながらブイブイ言わして、
 ミサイルを叩き込み、地雷をブチかまし、ターボでトンズラするのでございますよ!
 否応が無しにテンションが上がり、ついでに心拍数も増大ッ!!
 
とにかくアツイの一言に尽きます
 
アツイゼ、アツクテシヌゼ!



  ・・・ちなみに僕は、このゲームにハマリすぎて、
 ギャルとのデートをすっぽかしたという苦い経験があります。






  余談:このバカゲーを開発したのは、
    僕が愛してやまないアメゲーメーカーの「インタープレイ社」であり、
    キャラ選択中に、L・R・セレクト同時押しで右を6回入力すると、
    同社の「バイキングの大迷惑」に出てくる
頑丈オラフが出現します。
    それを知ったとき僕は嬉し泣きしたが、
    インタープレイ社愛好家以外には、本当にどうでもいい裏技である!