エルファリア2
RPG  95.6.9  ハドソン


 



  1993年の1月3日の出来事。
 「
ドラクエ、FFを追い越せ!!」という恐れ知らずのキャッチコピーを携えて、
 嵐の如く現れたRPGがありました。
 そのゲームの製作は、「天外魔境」「サクラ大戦」などで知られるレッドカンパニー。
 キャラクターデザインは、エアブラシを使わせたら日本一の松下進(ファミ通の表紙のひと)。
 監修がエンターブレイン社長のあの人。
 スペシャル級の豪華製作陣の手で作られたそのゲームの名は「
エルファリア」!!

  ところが・・・「エルファリア」は、独特なゲームシステムと松下進の濃いキャラの影響か、
 たいしたセールスを記録することはできず、
 嵐のように現れたはいいが
その勢いのまま去っていったのでした。
 情報誌の過剰な期待とユーザーの正直な評価のギャップに呑まれた「エルファリア」。
 あっという間にソフト価格が暴落していった「エルファリア」。
 僕は
380円で購入したぞ「エルファリア」。


  それから約2年半。
 その続編「エルファリア2」がひっそりと登場しました。
 「エルファリア」は続編となって、今度こそユーザーに支持されたか?
 いや、「2」もやっぱり支持されなかったし、見事に売れなかった。
 つーか、存在感自体
かなり薄かったのです。
 じゃあ「2」も面白くなかったかというと、僕はけっしてそう思いません。
 むしろ、
かーなり面白かったと断言致します。


  ゲームの続編が作られる場合、
 だいたい以下の4パターンに分類されます。
 1.前作の物語の続き
 2.マイナーチェンジ
 3.ゲームシステムの進化(稀に退化もある)
 4.名前だけの続編で全然別モノ

  で、続編として最も評価されるのは、
 3.のゲームシステムの進化、ゲームとしてのグレードアップでございます。
 僕が「エルファリア2」を支持する理由は、
 「1」のときゲーム的に未完成だった、あるいは
不評だった部分を見事に消化しきり、
 「2」で高い
ーム性を実現したことに他なりません。

  初代「エルファリア」のゲームシステムを簡単に片付けようと思えば、
 
奇抜のひとことにすべてが集約されますが、
 どのへんが奇抜かと言いますと、とりあえずコレを見てください。

  ・アイテムは5つまで装備できるが、
武器・防具の概念がない
  ・
経験値がなく、中ボスを倒す(占領された土地を解放する)とレベルが上がる。
  ・ザコ戦はアイテムを得ること
だけが目的(システム上、お金が存在しない)。
  ・戦闘はオートバトルで
眺めてるだけ
  ・主人公は、火・水・土・風と4チームに分かれている(1チーム4名の計
16名)。

  まぁ、どれもこれもどこかで聞いたことのあるゲームシステムなので、
 特徴を羅列されても「ふーん」としか思わないかもしれません。
 ところがどっこい「エルファリア」の場合、
 これらすべてが合体してるワケですから事情は変わってきますがな。
 とにかく、そのへんのRPGとはあらゆる面でかけ離れているので、
 「RPGの常識」がことごとく通じないことに違和感を覚えます。
 「とっつきにくくて濃い」、
これが「エルファリア」の特徴なのです。

  なかでも異彩を放っていたのが「
メルド」と呼ばれるシステムでした。
 「メルド」とは、通常のRPGよりも自由度の高い装備システムで、
 5つの装備品を身につけてステータスを上げるというものでした。
 身に付けるものが「装備品」というのがミソで、
 
5つまでならアイテムをなんでも装備できる(例えば「剣を5個装備」など)、
 ひっじょーに珍しいシステムでした。

  ですが、この「メルド」、
 一見自由度の高いシステムのように思えますけども、
 この自由度が情けないほどゲームに反映されていませんでした。
 「エルファリア」は中ボスを倒したときしかレベルが上がらないうえに、
 戦闘もオートバトルで進行するのでプレーヤーの戦略性が関与する余地もない。
 したがって、その場その場でのベスト装備というのは決まってくるし、
 「防御力を無視した超攻撃型の装備」などといったエキセントリックな作戦は
 まったく通用しないチクチクしたゲームバランスだったのです。
 そんな地味な作業を
16人ぶんも行うのは、
 
面倒と言いますか、ダルイと言いますか、敷居が高いと言いますか、
 ユーザーの求める大作RPG像とは
180度異なるものでした。


  で、「〜2」になったら、これらのシステムはどのように変化したのかと言いますと、
  ・主人公が16人から4人に。
パーティも1つだけになった。
  ・
経験値でレベルアップ式に変更になった。
  ・
武器・防具の概念ができた
  ・・・見事なまでに
フツーのRPG化しています
 これって、ただのパワーダウンじゃないですか?
 いや、違うッ!これは決してパワーダウンではないッ!
 これは前作のシステムをスマートにして、見事に消化しきった結果なのだ!

  まず、前作では各パーティに一属性が振り分けられており、
 これが敵との相性によって戦闘の有利・不利が大きく変化していました。
 でも「〜2」になりますと、「
フォーメーション」という概念が登場し、
 その陣形によってパーティの属性が変化するシステムにスマート化されたのだッ!

  「経験値でレベルアップ」というフツーなシステムも、
 前作での「アイテムを拾うことだけが目的のザコ戦がかったるい」という
 ユーザーの不評を見事にスマート化した結果(なのか?)ッ!!
 さらに前作のウリだったけども面倒なだけだった装備システム「メルド」も、
 武器・防具の概念ができたことによって
完全に撤廃
 これはもう、カルロス=ゴーン氏も唸るほどのスマート化ッ!!
 前作の最大のウリだった「メルド」システムを自ら放棄するなんて、
 なんとも潔いというかヤケクソというか、
 自分が起こした価格破壊で自分の首を絞めたマクドナルドのような生き様のようではありませんか!!

  では、「エルファリア2」は、
 前作で不評だった部分を徹底的に排除しただけの、単なる「ユーザーに媚びたゲーム」だったのか?
 いやいや、まぁ話は最後まで聞いてください。
 「エルファリア2」の最大の進化点は、
 奇抜すぎたシステムを改善したうえで、
 そこから新たな
ゲームの戦略性を生み出したことなのでございます。


  たとえば、前作のシステムの要だった「メルド」なんかは、
 まったく別モノのシステムとして変貌を遂げており、
 「〜2」では、
武器の性能を強化するシステムに変更されています。
 武器ステータスは、攻撃力、レベル、経験値といった基本性能から成っており、
 特定のアイテムを武器に「
チャージ(アイテムを消費してパワーを蓄積)」させることで経験値が上がり、
 「
メルド(武器同士を合体)」によって、新しい武器を造り出せます。
 で、これらの武器の特徴というのがよく練られておりまして、
 「
初期性能は高いが最大レベルが低い
 「合成の材料としては重宝するが
攻撃力が低い
 「基本性能はまるでダメだが
特殊効果が強力」などといった
 
一長一短がハッキリしたものも多く、
 武器のチューニングそのものが面白くなるように仕上がっているのです。
 「新しく合成した武器が前の武器より弱いのでパワーアップが必要」なんてことは
当たり前
 あーでもないこーでもないと頭を悩ませるハメになりますが、これがまるでパズルのようで快感です。

  また、前作からの流れとして、
 パーティの属性が、敵の属性に対して
ヤケクソに効果がデカイという特徴が残っておりまして、
 
敵属性に合わせて自分が有利な属性を選択するっていうのが
 ゲーム攻略のカギになってるのですけども、
 「2」では前述したように、フォーメーションによって属性が決まるようになっているので、
 
敵属性に合わせてフォーメーションを変えることが重要になってきます。
 が、このフォーメーションというのがなかなかのクセ者で、
 常に
前列2名・後列2名という陣形から成り立っているのだが、
 前列は戦闘レベルが上がり、後列は魔法レベルが上がるというシステムになっているため、
 いざ敵属性に合わせたフォーメーションを組んでみたら、
 
前列に出たキャラの戦闘レベルが低くてタコ殴りなんて場面も日常茶飯事です。

  したがって、ゲームを有効に進めて行くためのポイントとしては、
 「役立つ武器を
見極めたうえで育てる」のほかに、
 「キャラクターの戦闘・魔法レベルに
バラツキが出ないように管理する」の2つに絞られますが、
 そうするために必要な行為が何かといえば、
 ズバリ「
戦闘を繰り返すということ」に他なりません。


  レベル上げが必要な局面にブチ当たるゲームは、
 ゲームバランスが良くないと言われてかれこれ経ちますが、
 「エルファリア2」も、見事にこれに当てはまっています。
 たしかに、ゲームの進行に足止めをかけるレベル上げという単純作業は、
 さっさとゲームを進めたいと思う人にとっては面倒であり、プレー時間の大部分を戦闘に費やすのは苦痛だと思います。
 しかし「これから先、有利にゲームを進めるため」という
目的意識のある経験値稼ぎは、
 面倒ではないし、それこそが
本来のRPGの楽しさではないでしょうか?
 (もっとも、1レベルを上げるために数時間ダラダラするのは嫌ですけど)

  本作の場合、
 武器を成長させるためにアイテム集めをする=
戦闘しなけりゃならない
 キャラの強さを管理するための作業=
戦闘しなけりゃならない
 という足止めの成果は、確実に
「結果」として反映されるバランスに仕上がっています。
 たとえば、初めて行った場所では「火」の属性ばかりの敵が登場するが、
 「水」のフォーメーションの戦闘レベルが低いので厳しい戦いを強いられる、
 というようなことが多々あります。
 ですが、こういった「最初は苦戦を強いられる」場面では、
 たいてい
新しい武器が手に入るようになっているし、
 敵が強い=経験値が多いので、
レベルもサクサク上がっていく
 少しばかり戦闘を繰り返すだけで、
 数10分前まで強敵だった奴らと互角に戦えるようになるという
 
「強くなった」という手応えが実感できる作りになっているのです。

  本作でも戦闘システムがオートなので、
 プレーヤーが戦いそのものに関与できる場面が少ないことと、
 「1」のときよりも戦闘シーンのテンポが悪くなっているので、
 戦闘が少々かったるい点は、確かに否めません(戦闘も地味ですし)。
 ですが、「成長」というRPGの根本的な楽しさと
 独自のゲームシステムによる戦略性を、
 ゲームバランスで見事に完成させたゲームは、そうそうお目にかかれるものではありません。

  えー、ここで改めて、
 前作「エルファリア(1)」の主な特徴を挙げてみましょう。
 ・独自のシステムがややこしい
 ・16人ものキャラを管理するのが面倒
 ・アイテムを集めるだけが目的のダルイ戦闘
 「2」では、これらの部分はすべて解消されるどころか、練り直されて新しく生まれ変わっているのです。
 そういう意味でも本作は、前作を正統に進化させた、
 本当の意味で「
正しいゲームの続編」と言えると思いませんか?


  ・・・もっとも、僕がこのゲームを購入した理由は、
 当時クラスでただ僕ひとりだけがハマっていた
 「ゴダイゴ」の
タケカワユキヒデが音楽を担当していたからだけなんですけども。
  そして、彼の音楽がハマリに貢献したかというと、その答えは迷わず「
ノー」。
 だって、プレー中数十時間のあいだに
 「嗚呼、タケカワ節ってやっぱり素敵だわン・・・。」と感じることは、
 
まったくありませんでしたから。