スヌーピーコンサート
ETC  95.5.12  三井不動産 電通

 


  「キャラゲーに名作なし」というのは、
 多くのゲーマーにとっては常識中の常識です。
 最近ではキャラゲーでもしっかりしたものが多くなってきましたが、
 「
アニメキャラが主人公というだけのアクションゲーム」が乱発されていたのは、
 初代ファミコン時代から始まり、スーファミ時代においても同じことです。

  ところが、そんな時代にも
 とっても素敵なキャラゲーがございました。
 「
スヌーピーコンサート」がそうです。
 「スヌーピー」についてはいまさら説明する必要もないと思いますけども、
 世界で最も有名な
毒を吐くビーグル犬のことであります
 (僕にとっては「サ○ケイ新聞に連載が始まった瞬間に作者が活動を停止、そのまま他界。」
 という不謹慎なイメージしかないが)。

  キャラゲーというだけで思わず警戒してしまう人にとっては、
 このゲームの存在も「数あるキャラゲーのひとつ」というイメージが強いと思います。
 なにせ発売しているのが
 
三井不動産電通
 
いかにもゲームとは関係ないところ
 警戒するなというほうが無理であろう。
 しかも箱に書かれている文章が、
ますますアヤシさを倍増しています



  世界初(
)!「スヌーピー」がスーファミにやってきた!
               (
※スーパーファミコンとして



  どうですか!
 わざわざ注釈をつけているあたりに、
 何か
邪悪なニオイを感じずにはいられません
 しかもこの注釈、箱だけには飽きたらず、説明書にも同じように



  世界初(
)のスヌーピーのゲームの世界を楽しんで下さい!
               (
※スーパーファミコンとして



 と書かれています。


  得てして世の中、「世界初の○○!」というものは胡散臭いもので、
 ゲームだろうが映画だろうが生命保険だろうが、たいていどこかに落とし穴があるものです
 (○○に当てはまる単語が聞いたことのないものだと特に)。
 それが原作モノだとかキャラクターモノのゲームになった日にゃ、さらに危険度アップ!
 「原作の世界を忠実に再現!」とか謳いながら、
 忠実にどころか再現すらできておらず、
 
まったく異形の物体エックスになっているものが
 キャラゲーの大半を占めていることもございます。

  「スヌーピーコンサート」も、
 やたらと「
世界初」を強調しているあたり、
 物体エックスのひとつのような香りでプンプンです。
 デンジャラスです。

  ですが、ゲームをはじめてみると、
 それが要らぬ心配だったことがわかります。
 なにせ
グラフィックがビックリするくらいキレイなんです。
 あの独特のやわらかい絵のタッチや淡い中間色が、
 「あぁ、これがスヌーピーの世界だ」と思わず納得してしまうこと間違いナシです。
 そんなスヌーピーの世界をより一層ステキに演出しているのが、
 全編通して流れる
ジャズっぽい音楽
 「スヌーピーにジャズ?」と思うかもしれませんが、
 本当にマッチしているのだから仕方がない(
メインテーマは必聴!)。

  ゲームの内容は、
 コンサートを開くスヌーピーがいろんな人を招待するために、
 4つのミニゲームをクリアするというものですが、
 驚くべきことにそれらのゲームは操作法がすべて共通しているにも関わらず、
 まったく違うゲーム内容になっているということです。 

  使用するボタンは、十字キーと2つのボタンだけ。
 カーソルに見立てたウッドストックを操作して、スヌーピーに指示をするだけです。
 このゲームはマウスにも対応しており、
 本当にカーソル操作とクリックだけでゲームが成立しているのです。
 しかもこの操作、ドラッグなどの複雑な操作は必要としないし、
 ダブルクリックを知っていればボタンは1コしか使用しないで済むというなんとも簡単操作なんですが、
 それだけでスヌーピーに多彩なアクションをさせられるのですからビックリです。

  4つのミニゲームの内容は、

 ・「チャーリーブラウンの野球大好き!」→みんなと物々交換しながら、
                          チャーリーブラウンの野球道具を探す。

 ・「ライナスのラブラブ大作戦」→ライナスの代わりにリディアに花を贈る。

 ・「シューローダーの楽譜はどこ?」→無くした楽譜を探す冒険に出る。

 ・「リランの乗り物大好き!」→ベビーカーに乗って飛び出したリランを、無事に会場まで案内する。

  ・・・という内容で、
 それぞれがアドベンチャーゲーム、アクション、パズル、レースゲーム(?)になっています。
 
この時点でまずスゴイ


  なかでもスゴイのが、
 このゲームのメインである(と思われる)シューローダーのゲーム。
 このゲームは画面中に落ちているたくさんのオブジェクトを調べたり拾ったりしながら、
 障害物を乗り越えていくという面クリア型パズルゲームのような内容になっています。
 実はこれがですね、
思ったより難しいンですよ

  ゲーム序盤の流れを紹介すると、
 落とし穴がある→落とし穴の近くにスコップが置いてある
 →スコップでトンネルを掘って先に進む
 →トンネルを抜けるとボートハウスがある
 →さっきのスコップをオールにして次のステージへ・・・。
 という感じになっていて、すべてが
論理的なパズルになっています。
 どうしてこれが難しいかというと、
 
こういった一連の流れが
 まったくのノーヒントだから
なんです。

  本来、知的好奇心を満たす娯楽であるパズルゲームは、
 論理の世界だから子供よりも大人のほうが有利だと考えがちです。
 しかし、
それが間違いだということを
 「スヌーピーコンサート」は示しています。
 それは、
 子供(あるいはライトユーザー)なら少し考えればわかるかもしれないが、
 
大人は考えても考えてもわからないトリック
 数多く仕掛けられているからです。

  僕が引っ掛かって、なかなか先に進めないトリックはゲーム中盤にありました。
 紹介しましょう。


  そのステージのゴールは、
高い崖の上にあって登ることはできません。
 崖の下には
木の芽があり、そのへんには「じょうろ」というアイテムが落ちています。
 この時点で「
木の芽に水をあげれば先に進める」ということはわかります。
 でも「
どうやって水を手に入れたらいいかわからない」のです。


  ・・・考えた末、そこでいろいろな物をクリックした結果、
 クリックすると「
涙を流す木」を見つけたのですが、
 いくらクリックしても涙をキャッチできないのです。
 そこで、涙をキャッチするタイミングをはかってみたり、
 「
どうにかすれば大量の涙を出すに違いない」と考え、
 いろんな手段を探したのですが、どーしても
水をゲットできないのです。


  じつはこれが「
子供なら引っ掛からないトリック」だったのですね。
 ゲーム慣れした人なら「涙→水」と考えるので、
 たった一滴の涙を発見しただけで、それをどうにかしてキャッチしようとしたり、
 もっとたくさんの涙を得る方法を模索してしまうのです。
 なぜなら
「ゲームだから」という思い込みが
 
「それらしい反応があった
 →そこに答えが仕掛けられている」という思考回路を生み

 それが
他に解決手段があることを気づかせないからです。

  でもね、冷静に考えれば「涙を水の代わりにする」なんて
 
いかにもゲーム的表現じゃないですか
 「どうにかして涙をたくさん得る」なんていうゲーム的手段よりも、
 ここでは
「大量の水を手に入れる方法を探す」が正しかったのです。


  あるステージでは「カギのかかった小屋の中」があり、
 その小屋の近くにカギが落ちています。
 が、それを使っても開かない。
 周りを見渡すと、他にもいくつかカギが落ちているのでそれを拾いに行く。
 で、それを使う。
 でも開かないので、全部のカギを一ヶ所に集めて使ってみる。
 それでも開かないので、今度はカギを使う順番をいろいろ試してみる。
 ・・・というように、
 「
小屋にカギがかかっている
 →「何個かのカギがある」→「小屋のカギは
絶対に開く
 →「その小屋の中に、次に進むための何かがある」
 →「でも、そのカギの開け方がわからない」
 →「
カギを開ける方法を探そう」という思考のワナに陥ります。

  ノーヒントだからこそ、あらゆる可能性を追及できるはずなのに、
 「
ゲームだからこういう展開はありえないだろう」という
 ユーザーの固定観念が邪魔をして、なかなか先に進めないのです。
 こういったゲーム慣れしたユーザーのウラをかく仕掛けは、
 僕らに新鮮な体験を与えてくれることでしょう
 (ここの正解は、
 
「ダイナマイトを拾ってきて
 小屋ごとブッ飛ばす」
だったりする)。


  「たかがキャラゲーの分際で、
 えらく気合いの入ったゲームだなぁ〜」と思う方も多いことでしょう。
 すべては、4つのゲームをクリアしたときに流れる
 
スタッフロールで明らかになります
 じつは「
スヌーピーコンサート」は、
 
超豪華スタッフが製作していたのです

  スタッフロールの中には、
 ゲームの神様である、あの故
横井軍平氏の名前があり、
 ゲーム音楽は「
MOTHER2」の田中宏和氏が担当とある。
 しかも
製作が任天堂
 ビックリするけど、納得もしてしまう製作陣です。

  聞けばこのゲームが発売された経緯には、
 スヌーピーグッズのオフィシャルショップ
 
「スヌーピータウン」の存在があるそうです。
 なんでも、このゲームは「スヌーピータウン」の誕生記念に作られたそうなんですよ。
 で、「スヌーピータウン」を
プロデュースしていたのが
 
三井不動産と電通だった
そうなんですね。
 その館のオープンにあたって発売されたゲームが
 この「スヌーピーコンサート」だったワケです。

  これは推測でしかないが、
 「スヌーピータウン」オープン記念ソフトを発売するにあたって、
 それに相応しいソフトを作ってくれるのが任天堂だと見込んで
 三井不動産と電通は、このソフト開発の依頼をしたのではないでしょうか?
 見事に任天堂はそれに応え、
 まさしく誰でも楽しめるゲームを作り出したのでしょう。

  みんなが想像しているスヌーピー像の最大公約数な姿が
 この1本には見事に納められております。
 キャラゲーの姿を借りた、さりげに豪華なゲーム。
 それが「
スヌーピーコンサート」でございます。
 投げ売り対象になりやすいキャラゲーというジャンルですけど、
 見つけたら捕獲する価値はあるッ!!


  〜余談その1〜
 今回はシューローダー編を中心に紹介しましたが、
 チャーリー・ブラウン編では、
 スヌーピーならではの毒を含んだイカス台詞がボンボンと登場します。
 ユーモアとウィットに富んだ、アメリカンテイスト全開の台詞は必見です。

  〜余談その2〜
 だーいぶ後になって知ったことなンですけども、
 このゲームの音楽は、アニメ版「ピーナッツ」(邦題「スヌーピーと愉快な仲間たち」)で
 使用されてる曲のアレンジ版でした。
 ですが、このアレンジっぷりがこれまた見事ですので、機会あらば聴き比べてみるのをオススメします。