ミニ四駆 レッツ&ゴー!! POWER WGP2
RPG  98.10.8  任天堂

 


  ミニ四駆が好きだった全国のファミっ子たちは、
 今まで「ミニ四駆のゲーム」には何度も
裏切られ続けています
 そのファミっ子の屈辱の歴史は以下の通りでございます。

  ・「レーサーミニ四駆ジャパンカップ」
   →ミニ四駆を題材にしたすごろくゲームなので、
    
運次第でしかパーツが手に入らない
    思い通りのセッティングできず、ファミっ子たちは怒った。

  ・「激突!四駆バトル」
   →マシンをブイブイにいわせて、敵のクルマを破壊しまくるクラッシャーなゲーム。
    
じつはミニ四駆とは何の関係もないが、
    けっこう面白かったのでファミっ子たちは悩んだ。

  ・「ミニ四ボーイ2」
   →ゲームボーイで発売されたゲームだが、じつはミニ四駆っぽいだけで関係ない。
    
タミヤに訴えられたにも関わらずローソンで書き換えできたのは謎だが、
    ファミっ子たちは泣いた。

  ・「ミニ四駆シャイニングスコーピオン〜レッツ&ゴー〜」
   →スーファミのミニ四駆ゲーであり、ゲーム史上はじめてのマトモなミニ四駆ゲーム。
    が、あまりのマニアックさや
不親切なシステムにファミっ子たちは投げ出した。


  しかし、今回ご紹介する「ミニ四駆レッツ&ゴー〜Power WGP2〜」は、
 
ミニ四駆大好きファミっ子たちに超オススメのシロモノだと断言致します。
 もっとも、(いまとなっちゃあ
ミニ四駆ブームは去りましたし、
 
ファミっ子が死語ですけども。

  「レッツ&ゴー」とは、テレビ東京系列で放映してたミニ四駆のアニメ
 「爆走兄弟レッツ&ゴー」のことなンですけどですけども、
 このアニメ、まっすぐしか走れないミニ四駆が
コーナーを曲がったり
 「いっけ〜!」と
叫ぶたびにマシンが加速したり、
 ボディに可変翼がついてたり、マシンを破壊するカッターがついてたり、
 なぜか
波動砲を発射したり、遠隔操作でマシン性能が変化したりと、
 とにかくツッコミどころが多くて
激しくアツイアニメでございました。

  「〜WPG2」はそんな原作のアツイ内容を、かーなり
忠実に再現しているゲームです。
 具体的にどのへんが忠実かと言うと、原作のツッコミどころが
 見事に
そのまんまゲームになっているところですか。
 たとえば「いっけぇ〜!」と叫ぶだけでミニ四駆が加速するのは、
 ゲーム中では
爆走(いわゆるターボ)というシステムになっておりますし、
 なぜか曲がるミニ四駆も、ゲームとして「ステアリング」という形で再現され、
 通常のレースゲームほどではございませんが操作することも可能です。

  なかでも注目すべきは、
 原作同様に、いや原作以上に「ダウンフォース」の概念が
ブッ壊れているところでしょうか。
 本来「ダウンフォース」とは、推進力が生み出す空気抵抗がマシンを地面に押さえつける力のことであり、
 坂や不安定な路面で「マシンを安定させる力」のことを指します。
 が、「レッツ&ゴー」の世界でのダウンフォースは、
 小学生でもわかるように
かなりオーバーに解釈されており、
 
ダウンフォースがある=速いという図式ですべてが説明されております。

  さらにゲームでは、これが
もっとオーバーに解釈されており、
 ダウンフォースの数値が高ければ高いほど
坂道で加速するという
 
物理法則を完全に放棄したトンデモ的スーパー理論が展開されております
 (その数値が何に基づいているかは
もちろん謎)。 
 クルマが走るときには6つの方程式が作用するという話を聞いたことがありますが、
 ハッキリ言ってこのゲームは、それらを
無視していて素敵です。

  ゲーム中でのミニ四駆の性能は、トンデモ的ダウンフォースのほかに、
 加速、トップスピード、コーナーリングなどに分類されますが、
 これらもすべて
物理方程式とはまったく関係なく
 ミニ四駆本来のチクチクしたチューンを度外視した
単純仕様になっています。
 そう、とにかく速く走るためには、
何も考えずすべての数値を上げていけばいいという
 
スーパー単純仕様なのです。

  マシンの性能を左右するパーツには、
 いちおうモーター、ギアー、タイヤ、バッテリー、バンパーなどがありますが、
 どれもこれも、本来の
パーツ機能の常識を超えていてナイスです。
 どのように常識を超えているのかといいますと、
 なぜか
ダウンフォースの上がるモーターとか、
 不思議と
加速力のあるバンパーとか、
 どういうわけか
コーナーリングのいいバッテリーとか、そんなパーツばっかです。
 もちろん、実在するパーツは
まったく登場しません
 箱の裏には「セッティングの知識がなくても大丈夫」と書いてあり、
 その言葉に偽りはございませんけども、
 正確には「
セッティングの知識があっても役に立ちません」でございます。

  しかしもっとスゴイのは、物理法則を無視しているパーツよりも、
 マシン性能をさらに向上させるオプションパーツの存在に他なりません。
 まず序盤で
手に入る「ミステリーウェイト」というアイテム。
 本来ウェイト(重り)というパーツは、重量でマシンを安定させるためのものですけども、
 このゲームでは
装備すると軽くなるというニュートンもビックリのミステリーな効果。
 トドメには「アトミックブースター」という
核融合パーツまで登場。
 放射能汚染も恐れぬスゴイ小学生どもです。

  なんだかカッ飛ぶどころか
ブッ飛んでいる感もありますけども、
 敵チームもワールドワイドなので、これに負けじとブッ飛んでいる奴らばっかです。
 たとえばフランスチームは、レース中の
ミニ四駆にハッキングするし(何のためかは不明)、
 NASAに所属するアメリカチームは
 
わざわざ人工衛星からエネルギーを供給して爆走しまくりです。
 果てはエジプトチームは「
古代の力と科学技術の結晶だ」とかぬかして
 マシンをゴール前まで
テレポーテーションさせます。
 ラスボスの放つ「
ミニ四駆に楽しさなど必要ないわ!」というセリフに
 ツッコミどころのすべてが集約されているのは
気のせいですか


  散々ツッコミまくりましたけども、
 ゲームの中身はけっこうマトモ・・・いや、
かなりマトモです。
 いくらブッ壊れた話の内容つってもミニ四駆のゲームですから、
 マトモつっても「レースに勝つこと」がすべてなンですけど。

  ところがどっこい「〜WGP2」は普通のレースゲームと異なる点があります。
 それは操作するのがクルマはクルマでも、ミニ四駆なので
勝手に走ることです。
 簡単便利でこのうえないですが、プレーヤーがレース中に干渉できることは
 
ステアリングと爆走(ターボ)の2つだけですから、
 プレーヤーはレース中のほとんどを観戦するだけで終わってしまいます。
 ですが、レースは基本的に
5対5のチーム戦で行われるので、
 プレーヤーは同時に走っている5台のマシンを切り替えながら操作しなけりゃいけないし、
 爆走するのに必要な「爆走ポイント」はボタンを連打しまくることよって回復しますので、
 レース中はマシン切り替え&ボタン連打と
けっこう忙しかったりします
 「ミニ四駆のレースなんてどうせ見てるだけでしょ?」と一瞬でも思った人は
懺悔するべし。 

  でも、ここまで書いた時点では、
 「いずれにしろお子ちゃま向けのゲームなんでしょ?」と思う人も多いはず。
 いやいや、ご安心を。
 「〜WGP2」は、きわめて
ストイックなゲームでございます。

  ゲームの目的は、第2回ミニ四駆WGPで勝利することなんですけども、
 勝つためにはどうすりゃいいかと言いますと、ひたすら強く(
=速く)なることです。
 強くなる方法は2つあり、
 ひとつは、舞台となる「風輪町」にあるコースでマシンのレベルを上げること。
 もうひとつは、マシンパーツの開発者から
パーツを奪い取ることです。

  風輪町のコースでレコードタイムを叩き出すと、
 
前レコードとのタイム差が経験値として加算され、マシンの性能がアップするのです。
 ただテキトーに走らせるだけではマシンは強くならないのですね。
 強いパーツを集めるためにはパーツ開発者とレースで勝負し、それに勝つ必要があります
 (最終的にはレースで勝つよりも、
 
敵マシンを破壊した方が効率がいいのは狙っているとしか思えませんが)。
 強くなるために、つまりマシンレベルを上げたりパーツを奪い取ったりするには
 ひたすらレースをしまくらなければいけないのですが、
 これが通常のRPGにあたる経験値稼ぎにあたるのです。
 つっても、1レースはわずか10秒くらいという
マッハ級のテンポの良さで、煩わしくなくってイイ感じです。

  ゲームは全10話から成り、
 マシン強化→レース→マシン強化→レース・・・と単調な繰り返しですが、
 それを彩るのが、ゲームならではのオリジナルストーリーです。
 原作モノのオリジナルストーリーつったら、
 大抵の場合は子供騙しのテキトーなものが大半ですが、
 ビックリすることに「〜WGP2」のストーリーは、
 原作を知り尽くしている人、
 いやむしろ原作を
愛してやまない人が作ったとしか思えないデキになっております。

  各話はメインイベント、フリーイベント、大会のレース、と3つのパートにわかれているのですが、
 
一話ごとに主人公が決まっているなんてあたりは原作アニメさながらの構成ですし、
 パートの間に挿入されるアイキャッチは、アニメを意識した演出です。
 他にも、原作アニメのラスボスがイキナリ最初の対戦相手だとか、
 第1回レースに参加できなかったライバルが今回はレースに参加するだとか、
 かつての敵が仲間を率いてリベンジするとか、
 人気のあるライバルキャラを主役にしたシナリオがあるだとか、
 とにかく
アツイ展開が目白押しでございます。

  それだけでなくゲーム内容のほうもしっかりしています。
 町の住人ひとりひとりにも名前・性格付けがなされており、
 最初はミニ四駆に興味のなかった住人Aがミニ四駆に目覚めてライバルになる、なんてこともあったりしますし、
 クリアするのに影響のないフリーイベントも満載で、
 すべてのイベントを見ようと思えば、なかなかヤリ応えがあるつくりです。


  このゲームがチビッコどもにオススメできるのは、
 物理法則を
無視していようがミニ四駆の世界をブチ壊していようが
 わかりやすく
ゲームとしての面白さを追及しているからに他なりません。
 前作の「〜シャイニングスコーピオン」が、現実のミニ四駆をシミュレートしていたのに対し、
 「〜WGP2」はアニメの世界を
ゲームという形で再現しているワケなんですね。
 ゲームとしてどちらかがいいと言うわけではありませんが、
 チビッコどもをターゲットにしているのが明らかなこのゲームの場合では、
 敢えて
単純明快なシステムにしたのは大正解だったと思います
 (チュートリアルモードは
説明書よりも5倍は詳しいのもポイント高し)。


  「続編なのに全然違うシステムだなぁ」と思ってたら、あることが判明致しました。
 じつはコレ、「〜シャイニングスコーピオン」の
続編でもなんでもなかったンです。
 スーファミのミニ四駆ソフトで、
 「レッツ&ゴー」で、
 「2」がだからと言って、
 続編というワケじゃなかったンですね。

  タイトルを細かく区切るとそれがわかるのですが、
 まず「
ミニ四駆レッツ&ゴー」が正式タイトル。
 「
Power」はニンテンドーパワーの書き換えソフトという意味(当初は書き換え専用だったらしい)。
 「
WGP」とは、原作アニメの第2部にあたる
 世界ミニ四駆大会を舞台にした「WGP(ワールドグランプリ)」編のことであり、
 「
」というのは、その「WGP編」の続編(あるいは、第2回WGP)ということだそうです。
 知らんかった・・・。

  ちなみにメーカーは・・・
任天堂じゃないですか!
 マジでビックリです。
 さらに詳しく調べてみるとなんとコレ、
 じつは任天堂が
スーファミ最後に贈ったゲームだということも判明。

  もともとアクションを得意とする任天堂が
 そのハード性能を知り尽くした結果行き着いたのが、
 よりによってキャラゲーで、ジャンルは「
ミニ四駆RPG」。
 スーファミを骨の髄まで味わうためにも、
 
異端中の異端とも言える「〜WPG2」に触れてみてはいかがでしょうか。


   〜余談〜
  「〜WGP2」がリリースされたときには、開発元ジュピターが、
 ゲームボーイソフト「ミニ四駆GBレッツ&ゴー」(「シャイニングスコーピオン」の正統な続編)を
 すでに2本も発売したあとでした。
 骨の髄まで「レッツ&ゴー」の魅力を引き出すことは、
 きっとジュピターだったからこそできたことなのでしょう。