メタルスレイダー・グローリー
〜ディレクターズカット〜
AVG 2000.12.10書き換え開始 任天堂(HAL研)
ファミコンソフトの中で、いちばん高値をつけたプレミアソフトの名をご存知でしょうか? そのソフトの名は「メタルスレイダー・グローリー」。 初代ファミコンの晩期、そしてスーファミが波に乗った91年に 人知れずひっそりと発売されたソフトでございます。 このゲーム、何かを語ろうと思えば、 まず最初に「とにかくスゴイ」という言葉が浮かんでくる。 タイトルがやたらと長くていかにもスゴそうなのは置いといて、 まずスゴイのが、その制作期間。 その当時のソフト1本にかける制作期間はだいたい半年〜10ヶ月でしたが、 「メタルスレイダー〜」の制作期間は、なんと4年! じつはファミコン晩期というのは、開発途中のゲームがお蔵入りになるというケースが多く、 次々と忘れ去られていくことがしばしばあったのですけども、普通は4年もしたら忘れます (関係ないが、あの堀井雄二プロデュースの「ルーンマスター」の存在を覚えている人、いますか?) つぎにスゴイのは、ファミコンソフト史上最大の容量。 当時のソフトの容量が、だいたい2〜4メガだったのに対して、 「メタルスレイダー〜」は、なんと8メガ。 初代ファミコンの最終形態と語られる「ドラクエ4」と「FF3」を足した容量だと言えば、 いかにデカイ容量なのか理解していただけると思います (蛇足ですが、当初ディスクシステム5枚組みという超大作な計画だったそうな。ちなみにディスク1枚=1メガ)。 ゲーム内容もその容量に見合うボリュームで、 いろんな意味で初代ファミコンの伝説ソフトとして語られています。 「メタルスレイダー〜」は、 近未来を舞台にしたコマンド入力式のSFアドベンチャーゲームでございます。 主人公の青年が、たまたま手に入れたメタルスレイダー(要するにロボット)「グローリー」に 謎のメッセージが残されていたため、その謎を解き明かして行くという物語であります。 と書くと、べつに何ともないのですけども、 このゲームの最大の特徴は、グラフィックが異常に綺麗という点です。 しかも今までのアドベンチャーゲームとは比べ物になりません。 いろんな登場人物の様々な表情パターンをはじめ、 全編アニメーションバリバリで、とにかく芸が細かいと言いますか、 職人芸とも言えるこだわりが随所に散りばめられているのです。 ワタシのオタク仲間がこのソフトのオリジナル版を持っていたので、 一度拝見したことがあるのですけども、 当時のスーファミソフトなんかよりもよっぽどスゴかったンです。 それは、当時最先端だったはずの「FF4」のアニメーションを遥かに上回っておりました。 「メタルスレイダー〜」の実力は、その後口コミで広がるものの、 時代はすでにスーファミに移行してましたし、 発売元のHAL研究所というメーカーが倒産しかかるなどの理由で、 けっきょく再生産されることはありませんでした。 結果、「メタルスレーダー〜」の凄さを享受できたのは、ごく一部のユーザーのみ(マニアとも言う)。 そして、「メタルスレイダー」というスゴイゲームがある、という伝説だけが知れ渡っていったのです。 10年ほど時は流れ、 マニア以外の人たちも、この伝説のゲームをプレーする機会が与えられました。 ローソンのゲーム書き換えシステム専用のソフトとして あらたにスーパーファミコン版としてリメイクされたからです。 それが「メタルスレイダー・グローリー ディレクターズカット」でございます。 ただでさえ長い名前が、もっと長くなっています。 さぁ、期待を胸にスイッチオン。 ・・・・・・しかし約20秒後、どーしょーもない絶望感に襲われます。 眼前に現れたのは、ファミコンのしょぼい画面。 いくら美しいと語り継がれたグラフィックと言えど、所詮はファミコン。 しかもファミコン特有のチープな音楽が絶望感に拍車をかけてくれます。 おまけに文字は、8×8ドットのひらがな主体文字。 いくら当時感動したからと言っても、 いま現在では、そのグラフィックはかなり痛いと感じてしまいます。 しかし、これは伝説のゲームをそのまんま再現することで オリジナルの「メタルスレイダー〜」を堪能して欲しいという心意気なのだろうと納得させる。 はて、いったいどこが「ディレクターズカット」なのでしょうか? と、文句を言いながらゲームをプレーしていくと、 知らない間に、だんだん微妙に一部グラフィックが綺麗になっていきます。 そして見せ場になると、たいてい新グラフィックになるので、 その様は、まるでにっかつロマンポルノ(※)を思わせてくれます。 ああ、このへんがディレクターズカットなんですね。 ※にっかつロマンポルノ:石原裕次郎、小林旭、吉永小百合らが出演したことで一世を風靡した映画会社日活が、 1960年代の日本映画の衰退に伴って築き上げた、70年代のポルノ映画の代表。 当初は白黒映画が主流だったため、エッチシーンだけ総天然色だったということで有名。 正直いって、「メタルスレイダー〜」は万人向けのゲームではありません。 いかにもオタッキーが喜びそうな会話の内容はナニですし、 グラフィックの綺麗なゲームなら、今ではたくさん存在します。 それにしても、何故このソフトは中古市場に出回らなかったのでしょうか? このゲームをクリアしたとき、ワタシはあることに気がつきました。 「メタルスレイダー〜」の最大のウリは、 とてつもなく長期間の制作期間でも、 初代ファミコン最大の容量でも、 ましてやゲーム内容でもないことに。 「メタルスレイダー〜」の最大のウリ、 それは・・・ マニアが喜ぶ要素「萌え」が、 てんこ盛りだったことです。 要するに、物語中に登場するキャラに女性が異常に多いのでございます。 登場人物のほとんどが女性キャラ。 野郎のツラなんざ、全編で5人しか拝めません(主人公、友人、仲間、一般人、敵 各1名ずつ)。 残りはすべて女性、つーかギャル。 身内はギャル。 仲間はギャル。 知人はギャル。 情報提供者はギャル。 一般人はギャル。 協力者はギャル。 司令官はギャル。 もちろん敵もギャル。 まさしく「萌え」の先駆者ですよ!! 10年以上も昔、ギャルゲーというものはパソコンにしか存在しなかった! にも関わらず、ファミコンで萌え萌えを堪能することができたのです。 しかも特筆すべきは、その守備範囲。 清純派。 活発系。 おねーさま。 年上マダム。 OL系。 ウェイトレス。 メガネっ娘。 そして、妹(パンチラシーンあり)。 ・・・そりゃマニアが手放さんワケよ。 |