ウルティマ6 〜偽りの預言者〜
RPG  92.4.3発売  ポニーキャニオン

 


  「ウルティマ」はアメゲーでございます。
 生まれたのはイギリスだそうですけどもアメゲーでございます。

  そんな「ウルティマ」は世界的なRPGだと言われていて、
 国民的RPG「ドラゴンクエスト」のルーツだとも言われております。
 また、現在ではネットワークゲーム「ウルティマ・オンライン」のヒットによって、
 「ウルティマ」の存在が、いかに偉大かを知ってる人も多いことでしょう。

  しかし、多くの人にとって「ウルティマ」と言えば、
 ファミコン版「
ウルティマ〜恐怖のエクソダス〜」ではないでしょうか?
 おニャン子クラブのプロデューサーなあの人が
 メッセージを翻訳したというタテマエの、あの
ク○ゲーですね。
 
トラウマになっている人も多いはずです。

  いちおうそんなトラウマも、
 パソコン版「4」の移植アレンジ版であある
 「ウルティマ〜聖者への道〜」によって拭い去られたものの、 
 それは、ごく一部の者だけに限られています(
売れなかったから)。
 したがって、多くの人にとっては
 「
ウルティマ=強烈なアメゲーの象徴」というイメージが強いはずです。

  そして、スーファミ初期に発売された「
ウルティマ6」もまた、
 そんなイメージをさらに強め、数多くのユーザーたちに
消えない傷痕を残したのであります。

  消えない傷痕となった理由、
 それは、当時スーファミのRPGがまだ少なかったうえに、
 パソコン版の「ウルティマ6」をほぼ忠実に移植した本作が
 
異常なまでに難易度が高いからです
 (ファ○通の高得点レビューに騙されたから、というのもある)
 いや、まぁ難易度が高いというよりも、
 正確には「自由度が高い」という表現のほうが適切なのですが、
 その自由度の高さゆえに「何をしていいのかわからない」のです。

  物語は、現実世界に住む主人公ことプレーヤーの分身が、
 異世界「ブリタニア」に召喚されるところから始まります。
 が、主人公を召喚したのは、
ガーゴイルという魔族。
 主人公は、いきなりガーゴイルに処刑されそうになります。
 そんな主人公を救ってくれるのが、
かつての仲間たち。
 普通なら、感動の再開!というシーンなんですけども、
 そんなことよりも、
 そんな仲間たちの濃い顔のほうがよっぽど気になって、感動どころではありません。 
 
それに、あんたら誰ですか?
 街中でいきなり知らない人に馴れ馴れしく話し掛けられる嫌悪感を
 ゲーム開始後
わずか1分でに味わうことができます。

  さて、すごく嫌な気分でしょっぱなからテンション低くなったところで、
 さっそく
挫折したくなる仕掛けがプレーヤーに襲い掛かります。
 その仕掛けとは、
最初の城から出られないというもの
 (ちなみに、ゲーム中にはヒントなし。説明書にはヒントが書かれてましたけど)。
 さんざん悩みつつ、なんとか城から出ることに成功したもの、
 目の前に広がるのは
ムチャクチャ広い街
 このゲームは等身大にマップが作られているため、街の構造を把握するだけで一苦労
 (いちばん最初の街が、よりによって
ゲーム中で最も広いという嫌がらせ)。
 おまけにシームレス(区切りがない)タイプのフィールドマップなので、
 街とフィールドはつながっていて、街が広けりゃフィールドマップはさらに輪をかけて広い。
 絶対に迷います。
 
そこまでしてクリアさせたくないですか?

  それでも「〜4」さえプレーしておけば、
 物語の世界は同じですし、登場人物も同じ、
 フィールドマップの形も同じなら、もちろん街やダンジョンの位置まで同じなので、
 けっこうスムーズにプレーすることができるのです。
 そう、「ウルティマ6」は、
「〜4」をプレーしてないと
 マトモにプレーすらできない
という一見さんお断りのゲームなのです。
 ですが、いくらスムーズにプレーできると言っても、
 あくまで「
けっこうスムーズに」であって、決して「快適に」ではないというのが落とし穴です。
 いくらマップの形が同じだと言っても、
 どこで何をすればいいのかわからないことには変わりはないという、
 どうしようもない現実がプレーヤーを待ち受けています
 (クソ広いダンジョンに、何もないということも
ザラですし)。

  しかもこのゲーム、時間の概念がありまして(
なんと1分単位!!)、
 ムチャクチャ広い街に住んでる人たちは、
 時間に応じて様々な生活を営んでいるので、
 おつかいイベントに遭遇したときには、これまた
地獄
 イザ話そうと思った瞬間にその人の帰宅時間となり、
 目の前で家の中に逃げ込まれてしまったぁ日にゃ、
 
人間不信に陥ること間違いナシです
 また本作には、
 イベントをはじめ、アイテムにもクリアに直接関係のない
 
無意味なものが多いので、
 ただでさえ、どうしていいのかわからないプレーヤーを、
さらに悩ませてくれます

  おまけに、敵との戦闘が重要な要素を占めていないので、
 キャラを成長させるといった普通のRPGと同じ楽しさというのは
 
絶対に味わえません(※ラスボスがいません)。

  ですが、「ウルティマ6」は徹底的に世界のリアル性を表現しているので、
 それが「ウルティマ・オンライン」の世界構築へと貢献していたと考えれば、
 少しはこのゲームへの見方が変わります(
思い込みとも言う)。
 そして「ウルティマ6」において「ゲームを楽しむ」ということは、
 「攻略を楽しむ」ではなく、ブリタニアでの「仮想世界を堪能する」という
 インタラクティブな行為を満喫することを意味するものだと割り切れば(
思い込めば)、
 それなりに楽しめるようになるのです。
 が、もっともゲームである以上、
 やっぱり攻略しなけりゃならンので、やっぱり悩んでしまうのですけども。

  でも、自由度の高いインタラクティブなゲーム性のぶん、物語の流れは至って単純。
 ガーゴイルに占領された土地を、ただひたすらに解放していくだけです。


  「ウルティマ6」は、こんなゲームなんですけども、
 ただの極悪ゲームではありません。
 個人的には、超名作だと思っているくらいです。
 その理由は、
 物語が単純だからといって
決して価値のないものではないからです。
 むしろ「ウルティマ6」は、単純だからこそ心に残る物語とも言えます。

  「ウルティマ6」の物語に描かれてるのは、
 類稀に見る「
イデオロギーの闘争」という超ディープなテーマです。

  「〜4」にて、主人公はブリタニアの聖人君子になるべく、
 アビィスという名のダンジョン
 (「絶望のドン底」という意味。「ウルティマ」のダンジョンには名前に意味が込められている)より、
 コデックスという聖典を持ち帰ることが目的だったのですが、
 それを持ち出すことで地殻変動が起き、ガーゴイルの住む地下世界に悪影響を与えていたのです。
 
人間にとって利益が
 ガーゴイル、つまり
他種族の秩序を狂わせていたのですね。
 そこでガーゴイルはたち、コデックスを持ち出すことで地下世界に悪影響を及ぼした張本人、
 ガーゴイルにとっての
悪の親玉=主人公を暗殺しようと企てていたのです。

  本来のゲームなら、敵は「対立する存在=悪」として描かれますが、
 「ウルティマ6」の敵にあたるガーゴイル族は、
 人間とはまったく異なる生活を営む、
 
独自文化を形成している種族として描かれています
 つまり、ガーゴイルは異文化種族であり、人間に危害を与えようとしているけども、
 その目的は、あくまで自分たちの種族を防衛するためであって、
 決して
絶対的な悪ではないのです。


  けっきょく主人公は、人々の反発を買いながらもコデックスを元の位置に返す決断をし、
 ガーゴイルたちと和解する道を選択します。
 こうして人間とガーゴイルの両世界に本来の秩序が戻り、エンディングを迎えることになります。
 この結末に、「悪を倒すこと」がRPGの目的だと思ってた僕は

 やたらと衝撃を受けた記憶があります(
高校受験の前日に)。

  自分の利益を捨ててまで、相手のために行動することは、
 イデオロギーの闘争の視点で見れば、ただの理想絵図にすぎません。
 ですが、自分の利益追及だけが、必ずしも自分の利益にならないということを
 「ウルティマ6」は教えてくれたのです。


  〜余談その1〜
  しっかし、このゲームの難易度はハンパじゃなく高く、
  そのクソ難しさは、スーファミの中でもトップクラスです。
  攻略本がないとまずクリアできないので、うかつに手を出さないように。

  〜余談その2〜
  じつはこのゲーム、音楽もかなり良かったりします。
  和製ゲームには存在しないセンスが爆発しており、
  その聴き慣れないメロディラインに最初は違和感を覚えますが、
  そのぶん脳細胞に植え付けられること間違いナシ。
  なかでも、仲間の吟遊詩人の奏でる曲「Stones」は、
  スーファミ史上に残る名曲だと思っております。
  スーファミ版の音源ではありませんが、コチラで本作の音楽を聴くことができます。ぜひどうぞ。