ファミコン探偵倶楽部2
AVG  98.2.?発売(ニンテンドウパワーでのみ配信)  任天堂


  たまに思うことなンですけども、
 ゲームをリメイクすることって旧ユーザーを対象にしてるのでしょうか?
 それとも未プレーの新規ユーザーを対象にしてるのでしょうか?
 その答えは
どっちも対象にしているなんでしょうけども、
 スーパーファミコン版「ファミコン探偵倶楽部2」は
 おそらくは旧ユーザーをメインターゲットにしてるンじゃないかと思わせてくれます。
 その理由は、実際にプレーすればわかる(思い知らされる)ことなんですが、
 電源を入れた瞬間、旧ユーザーなら「えッ!?」と思わずビビってしまうニクイ演出が施されているからです。

  もともと「ファミコン探偵倶楽部2」は
 89年の春頃に、ファミコンのディスクシステムで発売された
 「ファミコン探偵倶楽部〜消えた後継者〜」の続編です。

  ディスクシステムってのは、本来ROMカートリッジ媒体のファミコンソフトを
 安価に、かつ大容量にするために開発されたものです。
 ディスクシステムが誕生した当時は、
 カートリッジに組み込まれたICチップの価格と共に
 
ファミコンソフト自体の価格が急騰してた時代でございまして、
 まだまだゲーム的に発展途上にあったファミコンが
 今後スケールアップしていくためには安価で大容量なソフトが必要不可欠だったというのが背景にあります。
 だってよーう、初期のファミコンソフトの価格ってじつは3800円だったンですよ。
 それが4500円が主流になって、
 まさに5800円が当たり前になりそうな時代だったンですぜ。
 それでもICチップの供給が足りなくって、まだまだ価格が上がりそうな勢いだったので
 任天堂の「安いディスクでソフトを供給する」という考え方はある意味正しかったのだと思います
 (もっとも、ウチの親はディスクシステムを買ってくれなかったにも関わらず、
 任天堂はディスクでしかゲームをリリースしなかったため、
 当時のワタシは貧乏ユーザーを置き去りにした任天堂が許せなかったのですけども)。

  では、大容量と謳われたディスクの容量ってどれだけだったのかと言いますと、
 じつはディスク1枚あたり「ドラクエ2」と同程度だったのです。
 「だったらカートリッジで発売しても問題ないか?」と言われそうですけども、
 「ドラクエ2」が5800円だったのに対してディスクのソフトは2800円。
 半額以下ですよ、アナタ。
 しかも、ディスクの最大のメリットはパソコンのフロッピーディスクと同じように
 容量の限界を、ディスク数枚組にすることによってカバーできる点
 (任天堂がリリースしたアドベンチャーゲームは、たいてい前後編というスタイルをとっていました)。
  
  そんな媒体でリリースされた「ファミコン探偵倶楽部」こと通称「ファミ探」ですが、
 殺人事件と怪談がミックスされたストーリー性を持ち、
 さらには当時にしてはかなり
リアルな死体描写だった故に
 全国の小学生を震えあがらせるほど怖い内容だったのでした
 (友人M氏は、しばらく
ひとりで眠れなくなったし、
 Y氏はあまりに怖くて
祖母に泣きついたそうです)。
 「ファミ探2」もまた然りで、
 ある女子高生が殺害された
学校の怪談が、物語のカギを握ってるという内容で、
 ホラーとミックスされたミステリーということで、全国の小学生をチビらせたのでした。

  そんなゲームのスーファミリメイク版でございます。
 で、このゲームはローソンでのゲーム書き換えシステム
 「ニンテンドウパワー」でのみゲット可能です。
 ちなみに書き換え料は2000円。
 安いです。
 ちなみに「ニンテンドウパワー」が登場したのは1998年の2月のこと。
 すでにニンテンドー64が登場して1年半以上経過してからのことです。
 ですから、スーファミの性能をフルに活用した
 (スーファミなりの)ハデなビジュアルや美麗な音楽が味わえること間違いナシです。

  物語は、丑美津高校(うしみつこうこう)という
 
いかにもな名前の学校に通う女生徒が
 ある朝河川敷に
死体となって発見されるところから始まります。
 生徒の名前は小島洋子。
 殺害された理由は
不明
 ただひとつわかることは、彼女が丑美津高校に伝わる怪談に興味を示し、
 それについていろいろと調べていたこと。
 彼女がもっとも興味を持っていたのは「
うしろに立つ少女」という怪談。

  わかることは、たったこれだけです。
 被害者小島洋子が殺された理由もわからンし、
 どこの学校でもありそうな怪談なんか突き詰めてもしゃーないし。
 事件はいきなり暗礁に乗り上げます。

  しっかし、「うしろに立つ少女」怪談のルーツを調べていくと
 十数年前に起こった「金田事件」と呼ばれる、時効寸前の殺人事件との接点が見えてきます。
 そうこうしているうちに、事件の真相とともに
 いろんな
人間模様が浮き彫りにされていくのです。
 ちなみに、このゲームの話には
奇抜なトリックがありません
 最近の推理モノってのは、謎解きや推理の楽しさを前面に出す傾向があるので、
 とにかく凝った仕掛けがスパークしまくりですけども、
 それを期待すると
間違いなく肩すかしを食らいます

  しかも、昔のアドベンチャーゲームは「コマンド総当り式」と呼ばれるように、
 「はなす」とか「しらべる」とかを片っ端から選んでいけば、次第に話が進むような形式になっていました。
 ぶっちゃけたハナシ、作業的にコマンドを片っ端から入力していけば
 アドベンチャーゲームってのはクリアできるようになっていたのです
 (ゲームオーバーやマルチエンディングでない場合はなおさら)。
 結論としては、そういった「ゲーム性の低さ」が、アドベンチャーゲームを衰退化させていったのと同時に
 「デジタルコミック」や「サウンドノベル」というジャンルを生み出していたのでした。
 じゃあ、何が「ファミ探2」の魅力なのでしょうか?

  あの松本清張の作品は「社会派推理小説」と呼ばれてたように
 彼は
殺人事件を媒体にして人間模様を描いていました
 なにせ松本清張作品は、物語の中盤で真犯人がわかるくらいですし。
 「ファミ探2」もまた然りで、
 殺人事件の犯人は最後の最後でわかるようになってるものの、
 犯行の動機は
けっこうどうでもよかったりします
 「ファミ探2」の物語の魅力は、
 「小島洋子殺害事件」と「金田事件」とが結びついていく過程や、
 それに関係する人達の人間模様、事件当事者たちの二面性といった
人間ドラマなのです。

  もともと初代ファミコン時代に誕生したアドベンチャーゲームですけども、
 それが生まれた背景には
 「ファミコンの貧弱なグラフィックでもストーリーや謎がしっかりしていればオッケー」
 という成立条件があったのです。
 その頃は、たしかにク○ゲーが多く氾濫していたけども、
 秀逸な作品もけっこうあったと思います。
 そんな時代にキラリと光っていた「ファミ探」が
 現代でどのように生まれ変わったのを満喫しながらプレーしてみるが良いかと思います。
 ちなみにそれがイチバン満喫できる台詞は、

  「あゆみちゃん?そんな名前のコはウチにはいないよ。
 
レイちゃんアスカちゃんならいるけどさぁ。」です。


  〜余談〜
 じつは「ファミ探」シリーズには、番外編が存在します。
 サテラビューでのみ配信された「BS探偵倶楽部」がそれにあたります。
 プレーしたことないンですけどね。