ライブ ア ライブ
RPG  94.9.2発売  スクウェア


  ゲームソフトで「ヒット作」と言われる定義って何なんでしょう?
 「ある程度の販売本数に達すること」というのが一般の定義です。
 が、某社の大作ソフトの場合、数十万本の売上を記録したにも関わらず、
 異常に開発費がかかっていたために赤字になってしまったなんてケースもあります。

  逆に大手メーカーが発売したが、
 メインの大作ソフトに埋もれてしまい
 そこそこの販売本数を出した割に知名度が低いというパターンもございます。

  「ライブ ア ライブ」は、後者に属するケースだと思います。
 「ライブ ア ライブ」の販売本数は約24万本と言われていますが、
 スクウェアの大作ゲーム「ファイナルファンタジー」の数百万本という売上と比較すると
 かなり少ないので、意外と知名度は低いンです。

  ワタシが「ライブ ア ライブ」の存在を知ったのは、
 週刊少年サンデーを立ち読みしたときのことだと記憶しています。
 
 緊急速報!
 小学館とスクウェアの共同企画のゲーム発表!!

 ・・・てなキャッチだったかな。
 スクウェアのゲームを、小学館系のマンガ家がキャラクターデザインをしたゲームが発売されるって感じでした。
 しっかし、その漫画家陣を見て驚け!聞いて驚け!

 
青山剛昌  代表作「YAIBA」 「名探偵コナン」
 皆月亮二  代表作「スプリガン」 「ARMS」
 藤原芳秀  代表作「拳児」 「JESUS」
 小林よしのり  代表作「おぼっちゃまくん」 「ゴーマニズム宣言」
 田村由美  代表作「BASARA」
 
石渡治  代表作「B.B」 「LOVE」
 
島本和彦  代表作「炎の生徒会」
 ・・・なんて豪華な作家陣でしょうか。
 ま、実際のところは7人の漫画家がキャラクターデザインした、というよりも
 キャラクターのイラストを7人の漫画家が描いただけ、という表現のほうが正しいのですが。

  ゲームは7つの章から成っており、
 それぞれ原始時代編、江戸時代編、中国編、アメリカ西部開拓編、
 現代編、近未来編、宇宙編と、手塚治虫の「火の鳥」を思わせるオムニバス形式です。
 が、べつに「火の鳥」ほどディープなテーマを扱ってるワケではありませんし、
 それぞれの章に関連性はほとんどと言っていいほどありません。
 唯一の関連があるのは、それぞれの章のボスが
 必ず「オディオ」という名前をもじっていること、くらいです。
 ですから妙な深読みは必要ありません。
 そんなことよりも特筆すべきことは、それぞれの章のゲームシステムがバリエーションに富んでいることです。

  原始時代編はストーリー中に
文字表記がありません
 江戸時代は「
百人斬り」というシステムがあり、
 シナリオ中に登場する全100人の敵を倒すというのが目標です
 (別に100人倒さなくてもクリアできますが、百人斬りを達成するのは至難の技です)。
 中国編では主人公はカンフーの師範代となり、
弟子の育成をします。
 アメリカ西部開拓編ではせまりくるギャングに備え、
 いろいろな
トラップをしかけるというもの。
 現代編では格闘家として、
対戦相手の技を覚えていくことで強くなります。
 近未来編の主人公は超能力者で、
テレパシー能力で人の心を読み
 さまざまな謎を解き明かしていく(ちなみに新興宗教批判なんかもしています)。
 宇宙編では、
宇宙船の中で起きた殺人事件を解決するというもので、
 敵が一切出現しないという、いわばアドベンチャーゲーム的なものになっています。

  本音を言っちゃうと、すべての章が魅力的なものだとは思いません。
 ゲーム的に煮詰めていくと、それぞれが1本のゲームとして完成したものになるのでしょうが、
 内容的に中途半端なものもあるのは否めません。
 が、それはボリューム感を考慮してご愛嬌としましょう。

  で、7つのシナリオをすべてクリアすると「中世編」というシナリオが登場します。
 いわゆる「剣と魔法の世界」を舞台にした
フツーのRPGっぽい内容です。
 お姫様が魔王にさらわれて勇者が助けに行き、
 伝説の剣士やら古の魔法使いやらを仲間にして魔王に挑むという、狙ったかのような
お決まり路線です。 

  ・・・が、しかし。
 「ライブ ア ライブ」の真髄は、この一見フツーに見える「中世編」にあると言っても過言ではありません。
 ありきたりなお決まり路線のシナリオは、大どんでん返しのための
茶番でしかありません。
 約束されたかのような物語の展開は
 裏切り、策謀、恨み、嫌悪、拒絶を経て、
誰もが予想できない方向に進み、
 我々を
絶望のドン底に叩き落してくれます。
 「中世編」の物語がどんな展開を見せるのか書きたくて書きたくて仕方がないンですけど、
 これを書いてしまうと
勿体無いので書きません。

  この「ライブ・ア・ライブ」のシナリオを書いた人は
 
「FF4」のダークサイドを描いたと語りました。
 「FF4」では暗黒騎士の主人公が聖騎士になって、
 友人の竜騎士カイン君が敵に利用されてうんぬん・・・という物語でしたが、
 「中世編」では、ミジメなカイン君的キャラの
 
ヒーローな主人公よりもカッコ良くなりたいという願望が
 運命の歯車を狂わせるのです。
 「正義」という名の信念で行動していた主人公の勇者は、
 そのチカラゆえに悲劇を引き起こしてしまいます。


  オムニバスのひとつでしかない「中世編」ですけど、
 プレー時間にするとたったの3時間くらいにも関わらず、
 その内容は
濃いです。
 王道を行くスクウェアらしからぬ結末を迎える「中世編」は、
 現在でも語り草になっているほどのシロモノであります。
 必見ッ。



  〜余談〜
  個人的には超能力少年が活躍する「近未来編」もナイスな味を出しています。
 「人類を救う」と謳う信仰宗教の神様は、
 なんとオ○ムならぬ
オインコ様というブラックジョークあり。
 人間の肉体を液化させた「液体人間」をひとつにまとめる
 
人類補完計画もビックリな人類液化計画。
 それに対して超能力少年は
 「そんな形にならなくってもなぁ、人はひとつになれるんだよッ!!」と怒りでシャウト。
 トドメにはロボットに乗って御神体オインコ様とのバトルに突入。
 ・・・・・・アツすぎです。

  なお、小学生の頃、
 このシナリオを書いた人にファンレターを送ったら、
 なんと直筆のハガキで返事が届きました
 (当時はバイトでスクウェアに入り、「魔界塔士Sa・Ga」や「半熟英雄」のキャラを担当してたそうな)。
 今でも大事にとっています。

 そのうち「お宝鑑定団」に持ち込む予定(ウソ)。